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活動報告
海外滞在中・帰国後の医療アクセス 海外在住・赴任日本人と訪日外国人の医療アクセス課題・制度・実践的対応策の包括的解説
JMWO-RR-0017
最終更新日 2026/6/17
海外滞在中・帰国後の医療アクセス 海外在住・赴任日本人と訪日外国人の医療アクセス課題・制度・実践的対応策の包括的解説
海外滞在中・帰国後の医療アクセス
海外在住・赴任日本人と訪日外国人の医療アクセス課題・制度・実践的対応策の包括的解説
日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:英語対応オンライン医療アクセス支援プロジェクト
- 海外滞在中・帰国後の医療アクセス
- 海外在住・赴任日本人と訪日外国人の医療アクセス課題・制度・実践的対応策の包括的解説
- 1. はじめに――グローバル化する人の移動と、追いつかない医療アクセス
- 2. 海外滞在中の日本人が抱える医療アクセス課題
- 2.1 言語・コミュニケーションの壁
- 2.2 医療制度・文化の違い
- 2.3 慢性疾患患者の薬剤継続問題
- 2.4 健康記録の管理
- 3. 海外療養費制度――帰国後の医療費還付の仕組み
- 3.1 海外療養費とは
- 3.2 申請に必要な書類
- 3.3 海外療養費の限界
- 4. 一時帰国時の医療保険――「逆海外旅行保険」という選択肢
- 4.1 海外在住者が一時帰国する際の保険ニーズ
- 4.2 逆海外旅行保険の特徴
- 4.3 現地での海外旅行傷害保険加入という選択肢
- 5. 海外在住日本人向けオンライン診療サービス
- 5.1 サービスの背景と需要
- 5.2 主なサービス内容
- 5.3 全診療科対応のセカンドオピニオンサービス
- 5.4 外務省による海外在留邦人向け医療相談支援
- 6. 訪日外国人・在日外国人の医療アクセス
- 6.1 在日外国人の医療課題
- 6.2 政府による外国人患者受入体制整備
- 6.3 医療インバウンド推進の政策動向
- 6.4 治療費未払問題という課題
- 7. アレルギー疾患の文脈における海外医療アクセス
- 7.1 海外赴任・在住者におけるアレルギー疾患管理
- 7.2 帰国後のアレルギー疾患再評価
- 8. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意
- 8.1 海外在住日本人向け情報提供の意義
- 8.2 訪日外国人医療における多言語対応支援
- 8.3 医療インバウンドにおける製品・サービス展開
- 9. まとめ
- 参考情報・出典
1. はじめに――グローバル化する人の移動と、追いつかない医療アクセス
人の国境を越えた移動は、海外赴任・留学・ワーキングホリデー・観光・インバウンド受診といった多様な形で年々拡大している。2024年には日本に暮らす外国人数が過去最高となり、新型コロナウイルス感染症により落ち込んでいた外国人観光客の数も過去最高を記録した(公益社団法人日本WHO協会解説)。一方で、海外に在住・赴任する日本人もまた、現地での医療アクセス・言語の壁・帰国後の継続的な医療管理という複合的な課題に直面している。
この人の移動の双方向性——「日本人が海外で医療を受ける」「海外在住日本人が日本の医療にアクセスする」「外国人が日本で医療を受ける」——のそれぞれにおいて、言語・制度・距離という3つの根本的な障壁が存在する。「外国語に対応している医療機関は限られる」(日本政府観光局JNTO解説)という現実は、訪日外国人にとっても海外在住日本人にとっても共通する課題である。
本レポートでは、海外滞在中の日本人の医療アクセス・帰国後の医療継続・海外療養費制度・訪日外国人の医療受け入れ体制・オンライン診療を活用した解決策を、医師・医療従事者・医療機関経営者・製薬企業担当者が活用できる形で包括的に解説する。
2. 海外滞在中の日本人が抱える医療アクセス課題
2.1 言語・コミュニケーションの壁
海外で医療機関を受診する際、最大の障壁となるのが言語の壁である。海外勤務健康センター(JOHAC)研究情報部の解説では、「外国語で病状を説明するのは大変だが、あらかじめ要点をメモしておけば片言でも何とか通じるはず」とアドバイスされている。具体的には、①何が気になっているのか(症状)、②それが始まった時期とその後の変化、③これまでに別の医師に相談した経験、④今回何を望んで受診したのか(治療目的)、という4点を事前に整理しておくことが推奨される。
2.2 医療制度・文化の違い
国によって医療制度は大きく異なり、「事前に知っておくとトラブルを回避できる」(日本政府観光局JNTO解説)とされる。受診時の費用の支払い方法(前払い制か後払い制か)・予約制度の有無・専門医への紹介システム(ゲートキーパー制の有無)・薬局制度の違いなど、本国(日本)の常識が通用しない場面が多い。
「受付をするときに、診療に必要なおおまかな費用をあらかじめ聞いておく」(JNTO解説)という実務的な助言は、医療費の不透明さという海外特有のリスクに対する備えとして重要である。
2.3 慢性疾患患者の薬剤継続問題
持病を持つ日本人が海外赴任・長期滞在する場合、日本国内で処方されていた薬剤の継続が大きな課題となる。海外勤務健康センターの解説では「日本国内で内服している処方薬がある場合には、まず主治医に相談し、海外でも入手しやすいような標準的な薬剤への変更を検討する」ことが推奨されている。
国によっては、同一の薬剤が販売されていない・規制が異なる(向精神薬等の持ち込み制限)・後発品(ジェネリック)の品質や流通体制が異なるといった問題が生じうる。赴任前の主治医との相談において、現地で入手可能な薬剤への切り替え、または十分な量の処方薬の確保(多くの国で個人輸入規制があるため、税関での確認が必要)が重要な準備事項となる。
2.4 健康記録の管理
「赴任前健康診断の結果をファイルに保管しましょう。海外で検査を受けると、検査結果は患者に渡されるのが普通です。こういった検査記録をファイルに追加してゆくと立派な健康記録ができあがります」(海外勤務健康センター解説)という助言は、海外では日本のように医療機関同士が検査結果を自動的に共有する仕組みが整っていないことが多いという実態を反映している。海外赴任者自身が「自分の健康記録の管理者」となる意識を持つことが、現地での適切な医療を受けるための実践的な備えとなる。
3. 海外療養費制度――帰国後の医療費還付の仕組み
3.1 海外療養費とは
日本の健康保険制度には「海外療養費」という制度があり、海外で急な病気にかかって治療を受けた場合、一定の条件下で医療費の一部が還付される(全国健康保険協会・東京都職員共済組合TJK解説)。
海外療養費の支給額は、「日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額」(全国健康保険協会解説)として算出される。
3.2 申請に必要な書類
海外療養費の申請には、現地医師による証明書類が必要である。
診療内容明細書(様式A):英語・韓国語・中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語の各言語版が用意されている(全国健康保険協会)
領収明細書(様式B):同様に複数言語版がある
歯科診療内容明細書(様式C):歯科治療の場合
受診者の海外渡航期間が確認できる書類:パスポートのコピー(氏名・顔写真のページと出入国スタンプのページ)
これらの書類は現地の医師に証明を依頼する必要があり、TJKの解説では「書類が用意できない場合は『海外療養費』を請求することはできないため、帰国後に現地の医師へ証明を依頼することが現実的に困難であるときは、事前に印刷し渡航先へ持参してください」と実務的な注意が示されている。
3.3 海外療養費の限界
海外療養費制度には重要な限界がある。
支給額の限界:「海外は自由診療のため、海外で医療機関を受診する場合、日本国内と同じ病気やケガでも国や医療機関によって請求額が大きく異なる」(TJK解説)ため、「海外療養費」の支給額は実際に支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも大幅に少なくなる場合がある。
適用対象の限定:「海外療養費」として請求できるのは、日本国内で健康保険が適用される医療費(保険診療)に限られる。美容整形・インプラント等、日本国内で保険診療とならない医療行為や投薬は全額自己負担となり、海外療養費の対象外である(TJK解説)。
治療目的の渡航は対象外:「治療を目的として海外へ渡航し、治療を受けた場合」は海外療養費の対象とならない(同解説)。あくまで「海外旅行中・赴任中に急病にかかった」場合が対象である。
送金不可:海外療養費の支給は海外への直接送金ができず、事業主または日本在住の家族に受け取りを委任する必要がある(全国健康保険協会解説)。
これらの限界から、TJKの解説では「必要に応じて、民間の海外旅行保険等へ加入し、万が一の医療費負担を軽減しましょう」と推奨されている。
4. 一時帰国時の医療保険――「逆海外旅行保険」という選択肢
4.1 海外在住者が一時帰国する際の保険ニーズ
海外に在住する日本人(駐在員・留学生・移住者等)が一時的に日本へ帰国する際、日本の健康保険(国民健康保険・社会保険)から脱退している場合、帰国中の医療費は原則として全額自己負担となる。この課題に対応するための保険商品として「逆海外旅行保険」がある(Wise解説)。
4.2 逆海外旅行保険の特徴
逆海外旅行保険とは、「一時帰国する日本人や訪日中の外国人を対象とした海外旅行保険」(Wise解説)であり、日本にいる間にケガや病気などで治療費が発生した場合に保険を適用できる。
メリットとして「日本のルールで保険適用を受けられ、医療費を軽減できる」ことが挙げられる一方、デメリットとして「日本在住者に入国前に申し込んでもらう必要がある」「歯科や産科など、緊急の受診以外の医療費には適用できない」点が指摘されている(同解説)。
一時帰国の期間によって適した保険商品が異なり、「一ヶ月以内の一時帰国ならTOKIO OMOTENASHI POLICYやVIVA VIDA!外国人向け医療保険が利用できる」「32日以上滞在する予定の人には逆海外旅行保険(東京海上日動)がおすすめ」(Wise解説)とされる。TOKIO OMOTENASHI POLICYは帰国後でも申し込みが可能で、日本在住の家族がいなくても申し込める点が便利とされている(同)。
4.3 現地での海外旅行傷害保険加入という選択肢
もう一つの手段として、在住している海外の国で海外旅行傷害保険に加入する方法がある。「日頃住んでいる海外で海外旅行傷害保険に加入しておけば、日本へ一時帰国した際の受診内容に応じて保険金が下りる」(Wise解説)が、現地での申し込みとなるため外国語での申し込みが必須となる。
5. 海外在住日本人向けオンライン診療サービス
5.1 サービスの背景と需要
海外生活において「急な体調不良が起こった」「継続的に飲んでいた薬が切れてしまった」というトラブルは頻繁に生じうる(御用聞Dr.解説)。「海外の医療における言語や制度の違いは大きな壁であり、日本語対応のクリニックを見つけるのは難しい」という現実的な課題に対応するため、近年「日本語で受けられるオンライン診療サービス」が注目されている。
5.2 主なサービス内容
海外在住者向け日本語対応オンライン診療サービスの代表的な機能として以下が挙げられる(御用聞Dr.解説)。
診断書の発行:海外の現地で必要となる場合がある医療証明書類の発行
薬の配送対応:日本の処方薬を海外で受け取る仕組み
継続処方の簡便化:「2回目以降は、同じ処方薬を診療なしで再処方が可能」とするサービスもあり、慢性疾患の継続管理における利便性が高い
利用者層:駐在員・海外移住者・ワーキングホリデー利用者・留学生を含む多くの海外在住者が利用しており、「安心して利用できる」「日本語対応でわかりやすい」という評価が得られている
5.3 全診療科対応のセカンドオピニオンサービス
より包括的なサービスとして、Doctorfellow(Medifellow)のような「海外在住日本人向けの日本人医師によるオンライン診療・セカンドオピニオン」サービスも存在する。10,000件・140カ国以上の相談実績を持ち、33科(全診療科)に対応、500人以上の日本人専門医に海外からオンラインで相談できる体制を整えている(Doctorfellow公式サイト解説)。対応領域には総合診療科・呼吸器内科・アレルギー科・循環器内科・心療内科・精神科・小児科等が含まれ、アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・イギリス・フランス・ドイツ・中国など140カ国以上で利用されている。
「適切な医療相談介入により、治療期間の短縮や医療費コストの縮減に繋がる」(同解説)という位置づけは、海外赴任者・現地医療制度に不安を持つ患者にとって、日本人専門医による第二の意見を得る価値を示している。
5.4 外務省による海外在留邦人向け医療相談支援
外務省は「海外在留邦人向けオンライン医療相談・精神カウンセリング提供事業」として、海外にいる日本人とその家族を対象に、無料のオンライン医療相談を提供する事業を実施した実績がある(Doctorfellow/MOFA解説)。対応する医師は「専門医としての経験を有する全診療科の日本人医師」「新型コロナウィルス患者の診療に従事する最前線の医師」「海外留学ないし海外の病院で働く日本人医師」とされ、糖尿病・高血圧などの持病を持つ方や処方薬の相談、現地で受けた健診結果への日本人医師からのコメントを希望する方に向けたサービスとして提供されていた。このような官民連携の取り組みは、海外在留邦人の医療アクセス改善における重要なモデルケースである。
6. 訪日外国人・在日外国人の医療アクセス
6.1 在日外国人の医療課題
日本に居住・滞在する外国人が病気やケガで病院を受診する場合、「多くの病院では多言語での対応が難しいために、言語やコミュニケーションが大きな課題となっている」(日本WHO協会解説)。それ以外にも、文化や宗教に配慮した医療ケアの課題、難民・無国籍・オーバーステイといった法的な立場に関連する課題など、医療現場では多くの課題に直面している。
外国人の出身国の傾向として、近年はベトナム・インドネシア・ネパールなど英語圏以外の国が急激に多くなっており(日本WHO協会解説)、英語対応のみでは不十分であるという課題認識が重要である。「ほとんど日本語ばかりの環境のなかで、本国と異なる日本の医療制度を十分理解できない」という外国人患者側の困難も指摘されている(同)。
6.2 政府による外国人患者受入体制整備
厚生労働省と観光庁は連携して「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」を作成している(観光庁解説)。このリストは毎年2回(5月・11月ごろ)、各都道府県経由で医療機関への登録依頼が実施される。
日本政府観光局(JNTO)のウェブサイトには、日・英・中(繁体字・簡体字)・韓の4カ国語に対応した医療機関情報が掲載されており、「訪日外国人旅行者が具合が悪くなった際に受診できる医療機関の情報」が、所在地・対応可能言語・診療科等で検索可能な形で提供されている(観光庁解説)。
6.3 医療インバウンド推進の政策動向
経済産業省「医療インバウンドの適切な推進の在り方に関する検討会」(2025年6月中間とりまとめ)では、医療インバウンド(治療目的での訪日外国人受け入れ)推進の政策的位置づけが高まっていることが示されている。
「厚生労働省国際保健ビジョン」(2024年8月26日)において「外国医療人材の育成、医療インバウンド含む医療の国際展開に戦略的に取り組む」、また「健康・医療戦略」(2025年2月18日閣議決定)において「医薬品・医療機器の海外展開を通じた医療のアウトバウンドと、治療等を目的に訪日する外国人に対する高度な医療等の提供を行う医療インバウンドを一体的に推進する」と明記されている(経済産業省検討会資料)。
6.4 治療費未払問題という課題
医療インバウンド推進における重要な課題として、「訪日外国人の救急診療における治療費未払問題」が指摘されている(経済産業省検討会中間とりまとめ)。「患者本人の支払能力を確認する前に診察・治療を行い、患者本人に支払意思がなく帰国してしまう、若しくは支払意思があったとしても支払能力が無く、結果として医療機関側が負担する形になるという問題」である。
医療インバウンド(治療目的渡航)においては前払いで対応することが通例であるが、「渡航が実現した場合においては、当日の治療・診察内容の変更等のトラブルが無い限り、未払いに(つながりにくい)」とされる一方、観光・偶発的な急病のケースでは未払いリスクが高いという構造的な違いが指摘されている(同資料)。このような外国人患者対応における課題は、医療インバウンド推進を避ける原因にもなりうるため、適切な制度設計が求められている。
7. アレルギー疾患の文脈における海外医療アクセス
7.1 海外赴任・在住者におけるアレルギー疾患管理
花粉症・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・喘息等のアレルギー疾患を持つ患者が海外赴任・在住する場合、特有の課題が生じる。
アレルゲンの地域差:日本で確認されたアレルゲン(スギ・ヒノキ花粉等)と赴任先のアレルゲン(地域特有の樹木・植物花粉、現地の住宅環境のダニ・カビ等)が異なるため、現地で新たな症状が出現する可能性がある。
舌下免疫療法の継続困難:日本でシダキュア・ミティキュア等の舌下免疫療法を開始していた患者が海外赴任となった場合、同一製剤が現地で入手できない・治療の継続方法が確立されていないケースが多い。赴任前に主治医と相談し、治療継続の可能性・中断のリスクについて十分な説明を受けることが重要である。
喘息治療薬の継続:吸入ステロイド薬・ICS/LABA配合剤等は国によって商品名・配合比率が異なるため、現地での同等製剤の確認が必要である。
7.2 帰国後のアレルギー疾患再評価
海外赴任から帰国した患者では、現地での生活環境の変化(住居・食生活・気候)によってアレルギー症状のパターンが変化している場合がある。帰国後の医療機関受診時には、現地での治療経過・使用していた薬剤(現地の商品名)・新たに出現した症状について詳細な問診を行うことが、適切な治療方針の再構築につながる。
8. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意
8.1 海外在住日本人向け情報提供の意義
製薬企業にとって、海外赴任者・在住者向けの疾患管理情報(持病の薬剤継続方法・現地での代替薬剤情報・オンライン診療サービスの案内)の提供は、患者の治療継続支援という社会的価値を持つ活動である。特に、海外赴任前の健康相談窓口(産業医・健診機関)との連携において、製薬企業が持つ薬剤情報・海外での流通状況に関する知見を提供することは、赴任者の安心につながる。
8.2 訪日外国人医療における多言語対応支援
外国人患者を受け入れる医療機関に対し、製薬企業・医療機器企業が多言語の患者向け説明資材(薬剤情報・副作用説明・服薬指導内容)を提供することは、医療機関の外国人患者対応体制整備を後押しする重要な支援となる。特に英語以外の言語(ベトナム語・インドネシア語・ネパール語等)への対応拡充は、近年の訪日・在日外国人の出身国構成の変化を踏まえた重要な取り組みである。
8.3 医療インバウンドにおける製品・サービス展開
医療インバウンド推進の政策的後押しが強まる中、製薬企業・医療機器企業にとって、高度医療を提供する医療機関との連携・治療目的訪日外国人向けの製品情報提供等の新たな事業機会が生まれつつある。一方で、前述の治療費未払問題等の構造的課題を踏まえた、医療機関との適切な連携設計が求められる。
9. まとめ
海外滞在中・帰国後の医療アクセスは、日本人の海外進出と外国人の訪日・在日の双方が拡大する中で、ますます重要性を増す医療政策・医療提供体制の課題である。
海外在住日本人にとっては、現地での言語・制度の壁、慢性疾患薬剤の継続、海外療養費制度の限界という課題に対し、日本語対応オンライン診療サービス・逆海外旅行保険・外務省等の支援事業が一定の解決策を提供している。一方で、これらのサービスの存在自体が十分に認知されていないケースも多く、赴任前の情報提供・啓発が重要な課題として残されている。
訪日外国人・在日外国人にとっては、多言語対応医療機関リストの整備・医療インバウンド推進という政策的枠組みが整備されつつあるが、英語圏以外からの患者増加に対応した多言語化の拡充、治療費未払問題への対応など、実務的な課題は依然として大きい。
アレルギー疾患のような慢性的な経過をとる疾患においては、地域差のあるアレルゲン環境・治療薬の継続性という特有の課題があり、赴任前・帰国後の丁寧な医療連携が患者の治療継続とQOL維持において重要な役割を果たす。グローバル化する人の移動に医療アクセスが追いつくよう、官民の連携した取り組みが今後さらに求められる。
参考情報・出典
公益社団法人日本WHO協会「だれひとり取り残されない外国人医療」
観光庁「外国人患者受入体制の充実」(厚生労働省・観光庁連携リスト、JNTOウェブサイト)
全国健康保険協会「海外で急な病気にかかって治療を受けたとき」(海外療養費制度)
東京都職員共済組合(TJK)「海外の医療機関で受診したとき(海外療養費)」
Wise「海外在住者向けの一時帰国時の保険の種類やメリット・デメリットについて徹底解説」
海外勤務健康センター(JOHAC)研究情報部「海外の医療」
みんなの家庭の医学WEB版「海外赴任の際、携帯するとよい常備薬」
御用聞Dr.(御用聞きドクター)「海外在住者向けのおすすめ日本語対応オンライン診療サービス5選」「海外在住の方必見!日本の処方薬を海外で受け取る方法」
Doctorfellow(Medifellow)公式サイト「海外在住日本人向けの日本人医師によるオンライン診療、セカンドオピニオン」
外務省「海外在留邦人向け医療サービス及び精神カウンセリング提供事業」
経済産業省「医療インバウンドの適切な推進の在り方に関する検討会 中間とりまとめ」2025年6月
厚生労働省「国際保健ビジョン」2024年8月26日
「健康・医療戦略」2025年2月18日閣議決定
日本政府観光局(JNTO)「日本を安心して旅していただくために―具合が悪くなったときに役立つガイド」
観光庁「訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査等を行いました」2024年
本レポートは公開情報・学術文献に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断を目的とするものではありません。臨床的判断については、最新のガイドラインおよび専門医の判断に基づいて行ってください。
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