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医薬品個人輸入の制度とリスク 輸入確認制度・特例範囲・偽造医薬品・救済制度対象外という重要論点の包括的解説
2026/7/1 08:38
医薬品個人輸入の制度とリスク 輸入確認制度・特例範囲・偽造医薬品・救済制度対象外という重要論点の包括的解説
医薬品個人輸入の制度とリスク
輸入確認制度・特例範囲・偽造医薬品・救済制度対象外という重要論点の包括的解説
日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:医薬品輸入サポートプロジェクト
- 医薬品個人輸入の制度とリスク
- 輸入確認制度・特例範囲・偽造医薬品・救済制度対象外という重要論点の包括的解説
- 1. はじめに――「便利さ」の裏にある重大なリスク
- 2. 医薬品個人輸入の制度的枠組み
- 2.1 輸入確認制度(旧・薬監証明)
- 2.2 輸入確認を受けずに輸入できる特例範囲
- 2.3 数量にかかわらず確認が必要な医薬品
- 2.4 麻薬・覚醒剤等の取り扱い
- 3. 偽造医薬品という深刻なリスク
- 3.1 偽造医薬品の実態
- 3.2 ED治療薬の約6割が偽造品という調査結果
- 3.3 厚生労働省が個人輸入に注意を促す具体的医薬品
- 3.4 情報源としての公的データベース
- 4. 医薬品副作用被害救済制度の対象外という重大な事実
- 4.1 救済制度とは
- 4.2 個人輸入品は救済制度の対象外
- 4.3 個人輸入代行業者をめぐる違法性
- 4.4 譲渡の違法性
- 5. なぜ個人輸入が行われるのか――背景にある医療ニーズ
- 5.1 個人輸入を選択する動機の理解
- 5.2 適正な医療アクセスへの誘導
- 6. 医師による個人輸入という適正な枠組み
- 6.1 医師の管理下での輸入
- 6.2 アレルギー疾患・睡眠医療領域における留意点
- 7. 製薬企業・医療機関・適正輸入事業者への含意
- 7.1 患者教育における個人輸入リスクの周知
- 7.2 適正な輸入・流通の支援
- 7.3 国内承認薬への適正な誘導
- 8. まとめ
- 参考情報・出典
1. はじめに――「便利さ」の裏にある重大なリスク
インターネットの普及により、海外の医薬品を個人輸入代行サービス等を通じて入手することが、技術的には容易になった。国内で承認されていない薬・日本では高価な薬・処方箋が必要な薬を、医療機関を受診することなく入手できるという「便利さ」に魅力を感じる人は少なくない。
しかし、この個人輸入には、制度上の厳格なルールと、健康・生命に関わる重大なリスクが存在する。厚生労働省は明確に「医薬品等の個人輸入は健康被害などの危険性があります」と警告しており、「そうした医薬品等は、日本国内で医薬品医療機器等法を遵守して販売等されている医薬品等に比べて、保健衛生上の危険性(リスク)があります」と注意を促している(厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課)。
本レポートでは、医薬品個人輸入に関する制度的枠組み(輸入確認制度・特例範囲)、偽造医薬品という深刻なリスク、医薬品副作用被害救済制度の対象外という重要な事実、そして医療機関・医療従事者が果たすべき役割を、医師・薬剤師・医療従事者・製薬企業担当者・そして医薬品の適正な輸入に関わる事業者が活用できる形で詳述する。
なお、本レポートは医薬品の適正な輸入・流通に関する制度理解を深めることを目的としており、不適切な個人輸入を推奨するものではない。むしろ、制度を正確に理解することで、患者の安全を守り、適正な医療アクセスを支援することを目指すものである。
2. 医薬品個人輸入の制度的枠組み
2.1 輸入確認制度(旧・薬監証明)
医薬品を個人輸入する際の基本的な制度として、「輸入確認制度」がある。千葉県の解説によれば、「一般の個人が自分で使用するために輸入(いわゆる個人輸入)する場合(海外から持ち帰る場合を含む)には、原則として、地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)に必要書類を提出して、営業のための輸入でないことの証明(いわゆる薬監証明)を受ける必要があります」とされる。
重要な制度変更として、厚生労働省医薬局の解説では「医薬品医療機器等法の改正に伴い、これまで薬監証明を取得して輸入を行っていたものについては、令和2年9月1日以降、薬監証明に代えて輸入確認証を取得していただくことになりました」とされている。つまり、従来「薬監証明」と呼ばれていた手続きは、令和2年(2020年)9月1日以降「輸入確認証」という名称・制度に変更されている。
この手続きを経て輸入した医薬品についても、「他者へ販売、授与することはできないことに十分注意してください」(千葉県解説)という重要な制約がある。個人輸入はあくまで「自分自身が使用するため」に限られ、他者への譲渡・販売は認められない。
2.2 輸入確認を受けずに輸入できる特例範囲
一定の範囲内であれば、輸入確認を受けずに(税関の確認のみで)個人輸入することができる特例がある。厚生労働省医薬局の解説によれば、その数量範囲は以下の通りである。
処方箋医薬品:用法用量からみて1ヶ月分以内
上記以外の医薬品・医薬部外品:用法用量からみて2ヶ月分以内
外用剤(毒薬、劇薬及び処方箋薬を除く):標準サイズで1品目24個以内
政府広報オンラインの解説でも、「以下の範囲内であれば、輸入確認を受けずに個人輸入することができます(超える場合、輸入確認の申請が必要)」として、税関の確認のみで個人輸入できる特例範囲が示されている。
2.3 数量にかかわらず確認が必要な医薬品
重要な例外として、数量が特例範囲内であっても、厚生労働省の確認が必要な医薬品が存在する。厚生労働省医薬局の解説では、「医師の処方箋又は指示によらない個人の自己使用によって、重大な健康被害の起きるおそれがある医薬品については、数量に関係なく、医師からの処方箋等が確認できない限り、一般の個人による輸入は認められません」とされている。
これは、健康被害のリスクが特に高い医薬品については、たとえ少量であっても医師の関与なしに個人が輸入することを認めないという、患者保護の観点に基づく規制である。
2.4 麻薬・覚醒剤等の取り扱い
政府広報オンラインの解説では、特に厳格な規制対象が示されている。「ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、あへん末、覚醒剤」については「何人も輸入することはできません」とされ、いかなる場合も個人輸入が認められない。「麻薬」については「事前に地方厚生(支)局長から許可を受ければ、自己の疾病治療の目的のために麻薬を携帯して入国することは可能」とされ、厳格な許可制のもとでのみ例外的に認められる。
3. 偽造医薬品という深刻なリスク
3.1 偽造医薬品の実態
医薬品個人輸入における最も深刻なリスクの一つが、偽造医薬品の存在である。東京オンラインクリニックの解説では、「世界的に流通している偽造医薬品の多くは、インターネット上で販売されていることが多く、特にED治療薬や抗がん剤、抗ウイルス薬などの医薬品が偽造品のターゲットとなりやすいです」とされている。
偽造医薬品の危険性は、その成分の不確実性にある。「偽造医薬品の中には、過剰な量の有効成分が含まれているものや、逆に成分が不足しているもの、さらにはまったく無関係の有害な物質が混入しているものもあります」(東京オンラインクリニック解説)。見た目やパッケージは正規品に似せて作られているため、外見からは偽造品を見分けることが極めて困難である。
3.2 ED治療薬の約6割が偽造品という調査結果
偽造医薬品の蔓延を示す象徴的なデータとして、厚生労働省が紹介するED治療薬の調査結果がある。厚生労働省の解説では、「ED治療薬(バイアグラ、レビトラ、シアリス)を製造・販売する4社の合同調査結果に関する情報(ネットから入手したED治療薬の約6割が偽造医薬品であった)」と示されている。
インターネット経由で入手したED治療薬の約6割が偽造品であったというこの調査結果は、個人輸入・ネット購入の医薬品がいかに高い確率で偽造品である可能性を含むかを示す、極めて重要なデータである。
3.3 厚生労働省が個人輸入に注意を促す具体的医薬品
厚生労働省は、「個人輸入において注意すべき医薬品等について」として、有害事象の発生や偽造医薬品の可能性がある具体的な製品を列挙している。これには、ヒト成長ホルモン製剤(ヒューマトロープ)、過敏性大腸症候群治療薬(ロトロネックス)、進行性前立腺ガン治療薬(プレナキシス)、サリドマイド(サロミド)、不整脈治療薬(タイコシン)、肺動脈性肺高血圧症治療薬(トラクリア)などが含まれる。これらの医薬品について、厚生労働省は「個人輸入による安易な使用はお控えください」と明確に警告している。
3.4 情報源としての公的データベース
政府広報オンラインの解説では、個人輸入のリスクに関する情報源として、「厚生労働省のウェブサイト『健康被害情報』や『あやしいヤクブツ連絡ネット』では、海外で健康被害が報告されている海外医薬品や偽造医薬品など、個人輸入を行う際に注意すべき情報」が提供されていることが示されている。これらの公的な情報源を参照することが、個人輸入のリスクを理解する上で重要である。
4. 医薬品副作用被害救済制度の対象外という重大な事実
4.1 救済制度とは
日本には、医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用による health被害が生じた場合に、医療費・年金等の給付を行う「医薬品副作用被害救済制度」が存在する。この制度は、医薬品のリスクに対する社会的なセーフティネットとして機能している。
4.2 個人輸入品は救済制度の対象外
しかし、個人輸入した医薬品については、この救済制度が一切適用されないという極めて重要な事実がある。東京オンラインクリニックの解説では、「個人輸入した医薬品を使用して健康被害が生じた場合、日本の医薬品副作用被害救済制度の対象外となることを忘れてはなりません」と明記されている。
「国内で正規に医師の処方を受けて使用した医薬品に関しては、副作用などで健康被害が生じた場合に医薬品副作用被害救済制度が適用されますが、個人輸入品については、この制度は一切適用されません。つまり、個人輸入品を使用するということは、万が一のリスクに対して自らが全責任を負うことになります」(東京オンラインクリニック解説)。
この「自己責任」という帰結は、個人輸入の最も重大なリスクの一つである。正規に医師の処方を受けた医薬品であれば、万が一重篤な副作用が生じても救済制度による補償を受けられるが、個人輸入品ではそうした補償が一切得られず、健康被害のすべての結果を個人が引き受けることになる。
4.3 個人輸入代行業者をめぐる違法性
個人輸入をめぐっては、「個人輸入代行」と称する事業者の存在も問題となる。千葉県の解説では、「個人輸入代行と称し、海外製の医薬品や医療機器を広告して、それらの購入を誘引する仲介業者がいます。しかし、日本の医薬品医療機器等法に基づく承認等を受けていない医薬品や医療機器を広告したり、販売、授与したり、又は販売、授与目的で貯蔵、陳列等を行う行為はいずれも違法行為です」と明記されている。
つまり、未承認医薬品を広告・販売する個人輸入代行業者の行為自体が、医薬品医療機器等法に違反する違法行為である。厚生労働省も「個人輸入代行業者と称する無承認無許可医薬品販売業者等に対して遺漏のないよう指導・取締りを行っていただきたい」(医薬監麻発第1031001号)として、こうした業者への取締りを指示している。
4.4 譲渡の違法性
個人輸入した医薬品を他者に譲渡することも違法である。厚生労働省の通知(医薬監麻発第1031001号)では、「個人輸入によって購入された無承認無許可医薬品の友人間等での譲渡が疑われる事例が報告されているが、無承認無許可医薬品の授与等は薬事法(現・医薬品医療機器等法)に違反する」とされている。「自分で使うため」という名目で輸入した医薬品であっても、家族・友人に分け与えることは法律違反となる。
5. なぜ個人輸入が行われるのか――背景にある医療ニーズ
5.1 個人輸入を選択する動機の理解
個人輸入のリスクを正しく理解するためには、なぜ人々が個人輸入を選択するのか、その背景にある医療ニーズを理解することも重要である。主な動機として以下が挙げられる。
国内未承認薬へのアクセス:日本で承認されていないが海外で使用されている医薬品を求める(重篤な疾患の患者等)
コスト:国内では高価な医薬品を、より安価に入手したい
受診の手間の回避:医療機関を受診せずに薬を入手したい(ED治療薬・美容関連等で特に多い)
海外在住者の事情:レポート17・20で詳述した海外在留邦人が、現地で日本の医薬品を入手したいというニーズ
5.2 適正な医療アクセスへの誘導
これらのニーズに対して、リスクの高い個人輸入ではなく、適正な医療アクセスへ誘導することが、医療従事者・医療機関の重要な役割である。例えば、国内未承認薬については、医師の管理下での適切な手続き(医師による個人輸入・治験・拡大治験等)が存在する。コストや受診の手間については、レポート13で詳述したオンライン診療の活用により、適正な処方を受けながら利便性を高めることが可能である。
海外在留邦人のニーズについては、レポート17で詳述した日本語対応オンライン診療サービス・処方薬の適正な配送サービスが、個人輸入に代わる安全な選択肢を提供している。
6. 医師による個人輸入という適正な枠組み
6.1 医師の管理下での輸入
個人輸入には、患者個人が直接行うものとは別に、医師が自己の診療に用いるために行う輸入という枠組みが存在する。医師が、国内未承認の医薬品を患者の治療に用いる必要がある場合、医師自身が輸入確認証を取得して輸入し、自己の責任において患者に使用するという形態である。
この場合、医師の医学的判断・管理のもとで医薬品が使用されるため、患者個人が情報なく個人輸入するのとは、リスクの性質が大きく異なる。ただし、この場合も国内承認薬と異なり医薬品副作用被害救済制度の対象外となること、医師が使用について全責任を負うことに変わりはなく、慎重な判断と十分なインフォームドコンセント(レポート21で詳述したSDM等)が求められる。
6.2 アレルギー疾患・睡眠医療領域における留意点
本レポートシリーズで詳述してきたアレルギー疾患・睡眠医療領域においても、個人輸入に関連する留意点がある。例えば、海外で使用されている特定のアレルギー治療薬・睡眠薬を個人輸入しようとする患者が存在しうる。これらについても、国内承認薬による適正な治療の選択肢を提示し、安易な個人輸入のリスク(偽造品・救済制度対象外)について適切に情報提供することが、医療従事者の役割である。
7. 製薬企業・医療機関・適正輸入事業者への含意
7.1 患者教育における個人輸入リスクの周知
製薬企業・医療機関が、患者向けの疾患・治療情報において、安易な個人輸入のリスク(偽造医薬品の蔓延・救済制度の対象外・自己責任という帰結)を適切に周知することは、患者の安全を守る重要な取り組みである。特に、ネット上で「個人輸入代行」を謳う広告に患者が接する機会が多い領域(ED治療薬・美容・ダイエット関連等)においては、正確な情報提供の意義が大きい。
7.2 適正な輸入・流通の支援
医療機関が必要とする医薬品・医療機器の適正な輸入(医師の管理下での輸入・正規の輸入手続き)を支援する事業は、患者の医療アクセスと安全を両立させる重要な役割を持つ。輸入確認制度(旧・薬監証明)の正確な手続き、必要書類の整備、薬機法の遵守という適正な枠組みのもとでの輸入支援が、医療機関の正当な医療提供を支える。
7.3 国内承認薬への適正な誘導
個人輸入に流れる患者ニーズの背景を理解し、国内承認薬による適正な治療、オンライン診療を活用した利便性の高い医療アクセス、海外在留邦人向けの安全な処方・配送サービス(レポート17で詳述)といった、リスクの低い代替手段を提供・案内することが、製薬企業・医療機関の社会的責任である。
8. まとめ
医薬品の個人輸入は、技術的な容易さの裏に、制度上の厳格なルールと健康・生命に関わる重大なリスクを抱えている。輸入確認制度(令和2年9月から薬監証明に代わる制度)のもとで、自己使用に限り一定範囲の個人輸入が認められるが、重大な健康被害のおそれがある医薬品は数量にかかわらず医師の関与なしには輸入できず、麻薬・覚醒剤等は厳格に規制されている。
最も深刻なリスクは偽造医薬品の蔓延であり、ネットから入手したED治療薬の約6割が偽造品であったという調査結果は、個人輸入・ネット購入の医薬品がいかに高い確率で偽造品である可能性を含むかを示している。さらに、個人輸入品は医薬品副作用被害救済制度の対象外であり、健康被害が生じてもすべての結果を個人が引き受ける「自己責任」となる。個人輸入代行業者による未承認医薬品の広告・販売、輸入した医薬品の他者への譲渡は、いずれも医薬品医療機器等法に違反する違法行為である。
個人輸入に流れる患者ニーズ(未承認薬へのアクセス・コスト・受診の手間・海外在住者の事情)の背景を理解した上で、医師の管理下での適正な輸入、オンライン診療を活用した利便性の高い医療アクセス、海外在留邦人向けの安全な処方・配送サービスといった、リスクの低い代替手段へ誘導することが、患者の安全と適正な医療アクセスを両立させる、医療従事者・製薬企業・適正輸入事業者の重要な役割である。
参考情報・出典
厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」「医薬品等の個人輸入について」
厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」(注意すべき医薬品リスト・ED治療薬約6割が偽造品の調査結果)
厚生労働省「個人輸入された無承認無許可医薬品の監視指導について」医薬監麻発第1031001号、平成14年10月31日
政府広報オンライン「健康被害などリスクにご注意! 海外からの医薬品の個人輸入」
千葉県「医薬品等の個人輸入について」(輸入確認制度・個人輸入代行業者の違法性)
東京オンラインクリニック「薬の個人輸入について」(偽造医薬品・救済制度対象外)
関東信越厚生局「医薬品等の輸入手続きについて」「医薬品等の輸入監視等について」
本レポートは公開情報・行政情報に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断や法的助言を目的とするものではありません。本レポートは医薬品の不適切な個人輸入を推奨するものではなく、制度の正確な理解を通じて患者の安全と適正な医療アクセスを支援することを目的としています。医薬品の輸入に関する具体的な手続きについては、地方厚生局等の関係機関にご確認ください。
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