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クリニックのPRと患者ジャーニー  ペルソナ設計・タッチポイント統合・SNS活用とブランディングの実践的解説

JMWO-RR-0024

最終更新日 2026/6/18

クリニックのPRと患者ジャーニー  ペルソナ設計・タッチポイント統合・SNS活用とブランディングの実践的解説

クリニックのPRと患者ジャーニー

ペルソナ設計・タッチポイント統合・SNS活用とブランディングの実践的解説

日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:医療コミュニケーション支援プロジェクト


1. はじめに――「腕のいい先生」だけでは選ばれない時代

「風邪をひいたら〇〇病院、鼻炎になったら〇〇クリニック」というように、生活者が特定の症状や悩みに対して即座に思い浮かべる医療機関を持っているという状態は、まさにブランドとして認知されている状態に近い(CREATIVE DIV.解説)。クリニックにとってのブランディングとは、患者と医師・クリニックとの信頼関係の構築であり、その先には「選ばれる医院・クリニック」としての認知につながっていく。

しかし、現在の医療機関を取り巻く環境は劇的に変化している。reiro(Start Up Branding)の解説によれば、厚生労働省の統計でも医科診療所・歯科診療所の数は増加傾向にあり、特に都市部では1駅あたり5〜10院が当たり前という過密状態が生じている。さらに「患者は受診前に平均3〜5件のクリニックをGoogle・SNSで比較検討する」という情報過多の環境、「口コミサイトや個人SNSの投稿1つで評判が瞬時に変動する」という信頼の流動性という、複数の逆風が同時に吹いている。

こうした環境下では、「腕のいい先生」「近所のクリニック」という機能的価値だけでは選ばれない。患者が受診前から安心感を抱き、受診後に家族や友人へ紹介したくなる一貫した体験を設計すること——これがクリニックブランディングの本質的な役割である。本レポートでは、レポート22・23で詳述した医療広告ガイドラインへの準拠を前提としながら、ペルソナ設計・タッチポイント統合・患者ジャーニーマップ・SNS活用戦略を、医療機関経営者・広報担当者・製薬企業担当者が活用できる形で実践的に解説する。


2. ペイシェント・ジャーニーという分析枠組み

2.1 マーケティングモデルから医療への応用

「ペイシェント・ジャーニー」は、マーケティングにおける「カスタマージャーニー」を医療分野に応用した名称であり、枠組みは同じだが医療・福祉関係の業界に特化したものである(医療マーケティング・広報PR・ブランディング解説)。

従来の患者行動モデル(1920年に提唱された「AIDMA」、その後の「AISAS」等)は、断続的な時系列で枠組みを構築していたが、各患者個人のジャーニーに言及するものではなかった。近年のAIの進化によりビッグデータの同時処理が可能となったことで、ペイシェント・ジャーニーはよりパーソナライズ化が進んでいる(同解説)。

「人口減少の問題が課題となる中、ペイシェント・ジャーニーは生産性向上と患者エンゲージメント、ブランディング改善のソリューションとして大きな役割を果たすことができる」(同解説)という指摘は、限られた患者数を奪い合う競争環境において、患者一人ひとりの体験の質を高めることが経営戦略として重要であることを示している。

2.2 製薬企業におけるペイシェント・ジャーニーの特殊性

同解説では、製薬企業・医療機器企業のペイシェント・ジャーニー分析における特殊性も指摘されている。医療関連企業の場合、カスタマージャーニーとして医療関係者をターゲットにする場合はB2B(Business to Business)となるが、直接消費者に販売する場合はB2C/P(Business to Consumer/Patient)に視点を変える必要がある。さらに製薬企業の場合、医療機関が処方する際には医師や医療機関が対象となるため、患者との接点は少ないという特徴がある。

海外を中心に製薬業界では、患者中心・患者志向を意味する「Patient-Centric」、患者に焦点を当てた医薬品開発を意味する「Patient Focused Drug Development」、患者が新薬を直接評価する「Patient Reported Outcome」など、患者を中心に据えた取り組みが進んでいる(同解説)。この潮流は、製薬企業がクリニックのPR戦略を支援する際にも、単なる製品紹介ではなく患者の体験全体を見据えたアプローチが求められることを示唆している。


3. タッチポイント設計――「認知→検討→受診→再来院→紹介」

3.1 個人開業クリニックの3つの主要タッチポイント

reiroの解説によれば、クリニックブランディングで最も重要なのは、患者が医院と接触するすべての場所(タッチポイント)で同じブランド体験を提供することである。個人開業クリニックの主要タッチポイントは、Web・SNS・院内体験という3つに集約され、これらは独立したチャネルではなく、「認知→検討→受診→再来院→紹介」というカスタマージャーニーの連続したレイヤーとして機能する。

3.2 8ステップのブランディング設計プロセス

reiroが提示する実際の設計プロセスは以下の8ステップである。

  1. ブランドコア策定:診療理念・ミッション・バリューを300字以内で明文化

  2. ペルソナ設定:主要3ペルソナ(主婦/ビジネスパーソン/シニア等)を言語化

  3. ブランドキービジュアル策定:ロゴ・カラー・タイポ・フォト指針を1冊のガイドに集約

  4. Web設計:HP・Googleビジネスプロフィール・予約システム整備

  5. SNS運用設計:Instagram/LINE/YouTubeの役割分担と週次コンテンツ設計

  6. 院内体験設計:受付→問診→診療→会計→見送りの5フェーズ脚本化

  7. スタッフ教育:ブランドブック共有・接遇基準の反復トレーニング

  8. 計測と改善:月次KPIレビュー・四半期ごとのブランド監査

このプロセスが示す重要な点は、ブランディングが単なる「見た目(ロゴ・カラー)」の問題ではなく、Web・SNS・院内体験という3つのタッチポイントを統合的に設計し、スタッフ教育まで含めた組織的な取り組みとして捉えられていることである。レポート15で詳述したWeb問診・予約システムの設計、レポート21で詳述した院内コミュニケーション設計は、いずれもこの統合的なブランディング設計の構成要素として位置づけられる。

3.3 開業段階別の施策展開

reiroの解説では、開業前から開業後5年までの段階別アプローチも示されている。

準備期(開業6ヶ月前〜):ブランドの9割が決まる最重要フェーズ。屋号・ロゴ・VI(ビジュアルアイデンティティ)・診療理念・ペルソナを固める。

開業初年度:存在を知ってもらうことが最優先。内覧会での挨拶、近隣世帯へのポスティング、Googleビジネスプロフィールの毎週更新を徹底する。この時期にMEO(レポート22で詳述)で上位表示を取れるかが、2年目以降の集患基盤を決める。

開業2年目:初診患者をリピート患者に転換するフェーズ。LINE公式での定期的な情報発信、口コミサイトへの丁寧な返信、院内体験の標準化を進める。ブランドとしてのポジション(「子どもに優しい歯医者」「働く女性の婦人科」など)を明確化する時期でもある。


4. ペルソナ設定の実践

4.1 診療科ごとのペルソナ設計の必要性

SNSCHOOLの解説では、SNS発信における典型的な失敗例として「ターゲットが曖昧で誰にも刺さらない投稿になる」ことが挙げられ、その回避策として「診療科ごとにペルソナ(想定患者像)を設定すること」の重要性が示されている。例えば小児科なら「子育て世代の親」、整形外科なら「スポーツをする学生や中高年層」といった具合に、ターゲットを明確化することで発信の切り口や媒体選びが定まる。

PR TIMES MAGAZINEの解説でも、「重要なのは、主要となる層を把握しておくこと。自院ならではの地域特性や、来院の多い年齢層を軸にペルソナを設定し、その人たちに伝わるブランディングを検討することが肝要」とされ、ファミリー層の利用が多い病院であれば小さな子どもが親しみやすい雰囲気づくりを徹底するなど、ペルソナに応じた環境整備の重要性が示されている。

4.2 アレルギー疾患領域における具体的ペルソナ例

本レポートシリーズで詳述してきたアレルギー疾患領域において、想定されるペルソナの具体例を以下に整理する。

花粉症シーズンの会社員・学生ペルソナ:レポート16で詳述した「我慢してから受診」という行動パターンを持つ層。シーズン前の初期療法の重要性を理解していない場合が多く、「症状が出てから慌てて受診する」という行動パターンの変容を促すコンテンツが響きやすい。

子どものアトピー性皮膚炎に悩む保護者ペルソナ:レポート7で詳述したアトピー性皮膚炎の小児患者(14歳以下で242万人規模)の保護者層。「治療を続けても良くならない」という不安、外用薬の使い方への疑問、新しい治療選択肢(生物学的製剤等)への関心が高い。

慢性蕁麻疹・難治性アレルギーに悩む成人ペルソナ:レポート7で詳述した推定200万人規模の慢性特発性蕁麻疹患者層。複数の医療機関を受診してきた経験を持ち、専門的な治療(オマリズマブ等)への情報ニーズが高い。

舌下免疫療法を検討する患者ペルソナ:レポート5で詳述した「毎年の市販薬対応に限界を感じている」患者層。3〜5年の治療継続という長期的なコミットメントへの懸念・治療効果への期待のバランスを取った情報提供が重要。

4.3 ペルソナ設定における医療広告ガイドラインとの整合性

ペルソナ設定・ターゲティングという手法自体は、レポート23で詳述した医療広告ガイドラインに抵触するものではない。ただし、ペルソナに向けた具体的なコンテンツ作成においては、「あなたの症状はこの治療で90%改善します」といった、特定の効果を保証するような表現にならないよう、一般的な情報提供という枠組みを常に意識する必要がある。


5. 院内体験設計――「痛い」「怖い」を超える環境づくり

5.1 ビジュアルアイデンティティの統一

PR TIMES MAGAZINEの解説では、病院ブランディングにおいてビジュアルアイデンティティ(VI)が重要な施策のひとつとして位置づけられている。外観の要となる看板をはじめ、ロゴ・建物の色彩・内観・配布物などあらゆる「見た目」と自院のアイデンティティを統一することが求められる。

特に病院は、患者にとって「痛い」「怖い」といったマイナスイメージが強くなりやすいため、少しでもポジティブな印象を与えるデザイン性が重要とされる(同解説)。色彩の統一感はもちろん、特定の診療・治療に特化した医療機関であれば、「骨粗しょう症外来」「頭痛外来」のように対象者にリーチできるわかりやすい表現に変えることも提案されている。ただし、これらの表現は前述の限定解除要件(レポート23で詳述)との整合性を確認する必要がある。

5.2 ペルソナに応じた院内設計

「自院らしさ」を強化するためには、患者のペルソナを想定した院内設計が重要である(PR TIMES MAGAZINE解説)。子どもの患者が多い医療機関を例に挙げると、外観・内観に親しみやすいデザインを採用する・子どもが理解できる診察・検査方法を説明できるイラストを作る・待ち時間が苦にならないキッズスペースを充実させる、といった施策が提案されている。

株式会社ユニセントの解説では、女性専門クリニックの実例として「待合室にアロマを焚き、落ち着いた照明と木目調の内装でリラックスできる空間を演出」「女性医師による診察を基本とし、プライバシーに配慮した動線設計」という具体的な工夫が紹介されている。また「神奈川県の『やさしい内科クリニック』は、高齢者に特化したバリアフリー設計と送迎サービスを展開。開業から2年で地域一番の患者数を誇るまでに成長」という成功事例も示されている。

5.3 高齢者・ITリテラシーへの配慮

CREATIVE DIV.の解説では、ウェブサイト設計において「直感的なナビゲーションとシンプルなデザインを採用し、高齢者やITリテラシーの低い利用者にも優しい設計にする」ことが重要視されている。スマートフォンやタブレットでも快適に閲覧できるレスポンシブデザイン、大きなフォント・シンプルなレイアウトといった配慮は、レポート12で詳述した高齢者向け健康啓発設計の原則と完全に一致する。


6. SNS活用戦略

6.1 SNS利用率の実態

itreat.co.jpの解説では、総務省の2024年度調査に基づき、主要SNS・アプリの利用率がLINE 91.1%、Instagram 52.6%、X 43.3%、Facebook 26.8%、TikTok 33.2%であることが示されている。TikTokは全年代で33.2%が利用しているが、10代65.7%・20代58.7%と若年層で特に高く、30代39.7%・40代39.9%と中間層にも広がっている。

これらのデータは、クリニックがSNS戦略を立てる際、ターゲットとするペルソナの年齢層に応じて最適なプラットフォームを選択する重要性を裏付けている。

6.2 媒体別の特性と活用方法

LINE:利用率91.1%という圧倒的な普及率を持ち、予約・リマインド・お知らせ配信の主要チャネルとして機能する(レポート15で詳述)。

Instagram:日本国内利用率52.6%で若い人に人気があり、若い女性層の比率が高いため、産婦人科や美容関係のクリニック・審美歯科などでの活用が適している(itreat.co.jp解説)。画像や動画がアカウント内に綺麗に並ぶため、院内の雰囲気を感じ取りやすい。リール(最大90秒の動画機能)・ストーリーズ(24時間で消える機能)の活用も有効(サイバーホーン解説)。

Facebook:40〜50代の利用者が多く、実名登録制であることが特徴(コスモス薬品開業支援解説)。拡散ルートが知り合いベースになるため新規患者への拡散力は限定的だが、身近な人からの情報拡散により不安や問題を解決したいというニーズに応えやすい(itreat.co.jp解説)。既存患者への予防接種のお知らせや季節ごとの告知に適している。

TikTok:短尺動画を中心に認知拡大に強みを持つ。古河総合病院の事例では、InstagramとTikTokを組み合わせた戦略で初投稿から30万再生、現在は100万再生を超えるコンテンツも登場し、月間リーチ数80〜100万に達している(SNSCHOOL解説)。

6.3 SNS活用の成功事例

SNSCHOOLが紹介する成功事例として、渋谷にあるクリニックTENの事例が挙げられる。InstagramとLINEを活用し、患者の来院前体験をスムーズに設計したことで、SNSでの発信内容がGoogle口コミで拡散され、結果として予約率の向上に直結した。「利便性の高さ」が患者の不安を軽減し、来院前に安心感を持ってもらえる導線設計に成功した事例である。

自由が丘クリニックソフィアの事例では、YouTubeとInstagramを組み合わせた情報発信により、Instagram経由でYouTubeや公式サイトへの流入が増加し、来院前に十分な情報を得た患者が予約に至るケースが増えた。視覚的に「安心できる環境」であることを伝えることで、初診の心理的ハードルを下げることに成功している。

6.4 「肩ひじ張らない」SNS運用の考え方

コスモス薬品開業支援のコラムでは、プライマリケアメインのクリニックにおけるSNS運用について、興味深い視点が示されている。「自分がこだわっている部分が『識別』の対象となるので、その部分を切り取り、発信していく」「医療従事者にとっては特別ではない、ごく当たり前のことであっても、患者様側からみればそうではない」という指摘は、特別なコンテンツを無理に作る必要がないことを示唆している。

「医療情報に限らず、日常の院長やスタッフのオフショットでも雰囲気のよさが伝われば、見る側が勝手に『識別』してくれる。大切なのは継続性であり、配信も月に数回でいい」(同解説)という考え方は、SNS運用に過度な負担を感じている医療機関経営者にとって、現実的なハードルの低い出発点を示している。「発信している」こと自体が、発信していない競合他院との情報量における「識別」につながるという指摘は重要である。

6.5 SNS運用における失敗パターンと回避策

SNSCHOOLの解説では、医療機関のSNS運用における典型的な失敗パターンが整理されている。

失敗例1:医師目線で専門用語ばかりを使った投稿 回避策:医学用語は必ず「日常的な言葉」に翻訳して伝える。イラストや写真を活用すれば、視覚的に理解しやすくなり共感も得られる。

失敗例2:最初だけ積極的に投稿し、その後数か月更新が止まる 回避策:「情報が古い病院」という印象を避けるため、無理のない範囲での定期更新を継続する。株式会社青春貢献の解説でも「一度でも『放置された印象』を与えると、信頼を損なう可能性がある」と同様の指摘がなされている。

6.6 採用活動との連動

SNS活用は集患だけでなく、採用活動においても重要な役割を果たす。サイバーホーンの解説では「SNSから応募を決意する方は自院に愛着を持っているはずです。そのため、採用後も一生懸命に働いていただけるとともに、その姿に感銘を受けた患者さんがクリニックに愛着を持つきっかけにもなる」という、採用とブランディングの相互強化的な関係が示されている。古河総合病院の事例でも、SNS経由で毎月自己応募(採用エントリー)が発生しているという成果が報告されている。

6.7 90日間の段階的運用プラン

SNSCHOOLが提案する実践的なロードマップとして、「準備→初期運用→改善・拡張」という3フェーズに分けた90日間の運用プランが紹介されている。

準備フェーズ:使用するSNSの選定(LINE・Instagram・YouTube・TikTok・Xなど、それぞれの特徴を踏まえて選ぶ)、医療広告ガイドラインの確認(誤った投稿でトラブルを避けるため、院内でルールを整備)、投稿者の選定と教育(担当者を決め、ネットリテラシーやコンプラ研修を実施)、コンテンツ企画(診療案内・医師紹介・健康情報など発信するテーマをリストアップ)。

このプロセスにおいて、医療広告ガイドラインの確認が準備段階の重要な構成要素として明示的に位置づけられている点は、SNS運用が単なるマーケティング施策ではなく、レポート23で詳述したコンプライアンス体制と一体不可分であることを示している。

6.8 SNS運用上の注意点――医療相談の場にしないこと

SNS活用におけるリスク管理として、「医院と患者さん、地域との接点づくりにも役立ちますが、医療相談の場にしないこと、返信範囲を明確にすることは重要」(itreat.co.jp解説)という指摘は、コメント機能・DM機能を持つSNSプラットフォームの運用において特に重要な留意点である。個別の症状相談に対してSNS上で具体的な診断・治療方針を回答することは、医療法・医師法上の問題を生じるリスクがあるため、「来院・受診をお勧めします」という形での誘導にとどめる運用ルールの整備が必要である。


7. 計測と継続的改善

7.1 KPI設定の重要性

reiroの8ステップモデルにおける最終段階「計測と改善」では、月次KPIレビュー・四半期ごとのブランド監査が提案されている。具体的なKPIとしては、Webサイトのアクセス数・予約率・新患数・再診率・口コミ評価・SNSのフォロワー数とエンゲージメント率・採用エントリー数等が考えられる。

7.2 ブランディングの長期的視点

株式会社青春貢献の解説が指摘するように、「ブランディングは短期的に成果が出るものではない」。SNSの継続的な運用によって、地域に根ざした信頼あるクリニックとしてのイメージが形成されるまでには時間を要する。この長期的視点を経営者・スタッフ全体が共有することが、中長期的なブランディング戦略の継続性を支える基盤となる。


8. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意

8.1 アレルギー疾患領域の患者教育コンテンツ提供

製薬企業が、本レポートシリーズで詳述してきたアレルギー疾患の疫学・治療選択肢に関する正確な情報を、医療機関のSNS・ウェブサイトで活用しやすい形(インフォグラフィック・短尺動画素材等)で提供することは、医療機関のコンテンツ企画における負担軽減と、患者への正確な情報伝達の両方に貢献する。

8.2 医療広告ガイドラインに準拠したコンテンツテンプレートの提供

製薬企業が提供する疾患啓発素材は、レポート23で詳述した医療広告ガイドラインの禁止6類型・限定解除要件を踏まえた設計があらかじめなされていることが望ましい。医療機関側が安心して活用できる「規制準拠済み」のコンテンツテンプレートの提供は、製薬企業の専門性を活かした重要な価値提供となる。

8.3 院内体験設計における製品情報の適切な配置

待合室での疾患啓発ポスター・パンフレットの配置等、院内体験設計(タッチポイントの一部)において製薬企業の情報提供を行う際にも、医療機関のブランドイメージ・ペルソナ設計との整合性を考慮した提案が、医療機関にとって価値のある協業関係構築につながる。


9. まとめ

クリニックのPRと患者ジャーニー設計は、「腕のいい先生」という機能的価値だけでは選ばれない競争環境において、Web・SNS・院内体験という3つのタッチポイントを統合的に設計し、「認知→検討→受診→再来院→紹介」という一連の患者体験を一貫したブランド体験として提供する取り組みである。

ペルソナ設定(診療科・地域特性に応じた想定患者像の明確化)、ビジュアルアイデンティティの統一、SNSプラットフォームの特性を踏まえた媒体選択(LINE 91.1%・Instagram 52.6%という利用率データに基づく戦略的判断)、そして「肩ひじ張らない」継続的な情報発信という複数の要素が組み合わさることで、地域に根ざした信頼されるクリニックとしてのブランドが構築される。

そして、これらすべての施策は、レポート22・23で詳述した医療広告ガイドラインという制約の中で実践される必要がある。「医療広告ガイドラインの確認」がSNS運用準備フェーズの明示的な構成要素として位置づけられているように、効果的なPR戦略とコンプライアンスの両立は、現代の医療機関経営における不可分な経営課題である。


参考情報・出典

  • reiro(Start Up Branding)「クリニックのブランディング完全ガイド|選ばれる医院の作り方と集患戦略【2026年最新】」

  • 医療マーケティング・広報PR・ブランディング「ペイシェント・ジャーニー(Patient Journey)とマーケティング」

  • SNSCHOOL「患者に選ばれる病院のSNS成功事例|ブランディングと集患効果を両立」

  • PR TIMES MAGAZINE「病院ブランディングとは?信頼と認知を高める広報戦略と具体的な施策・実践ポイントを解説」

  • CREATIVE DIV.「医院・クリニックのブランディングを考える」

  • 株式会社ユニセント「クリニックの『ブランディング・コンセプト』とは?病院の集客戦略と実践ステップを解説」

  • 株式会社青春貢献「クリニックSNS運用の成功法|炎上リスクを避け集患・採用に活かす方法とは?」

  • itreat.co.jp「病院・クリニックの集患に最適?SNSの活用方法と活用事例を紹介」(総務省2024年度調査引用)

  • サイバーホーン「クリニックのSNS活用法4選!運用の必要性やメリット・デメリットも解説」

  • コスモス薬品開業支援「SNSを活用したクリニックのブランディング戦略...初心者がミスなく運営するためのポイント」


本レポートは公開情報・学術文献に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断を目的とするものではありません。また、医療機関の広告・PR活動にあたっては、最新の医療広告ガイドラインを確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。

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