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疾患啓発コンテンツの情報設計  製薬協指針・販売情報提供活動ガイドラインを踏まえた一般人向けコンテンツの適正な設計

2026/7/1 08:42

疾患啓発コンテンツの情報設計  製薬協指針・販売情報提供活動ガイドラインを踏まえた一般人向けコンテンツの適正な設計

疾患啓発コンテンツの情報設計

製薬協指針・販売情報提供活動ガイドラインを踏まえた一般人向けコンテンツの適正な設計

日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:疾患啓発コンテンツ・パートナーシッププロジェクト


1. はじめに――「広告ではない」が「自由でもない」という独特の位置づけ

レポート23で詳述した医療広告ガイドラインレポート36で詳述した自由診療における製品紹介は、医療機関による広告を主な対象としてきた。本レポートで取り上げる「疾患啓発コンテンツ」は、医療機関ではなく主に製薬企業・医療機器企業が、特定の疾患について一般の人々の理解を深めることを目的に提供する情報という、異なる位置づけを持つ領域である。

疾患啓発コンテンツは、製品名を直接訴求しないため、一見すると「広告ではない」ように思える。しかし、Medinewの解説が指摘するように、「疾患啓発情報や、特定の疾患の患者・家族に向けた医薬品関連情報は、それぞれ単独でみると原則として広告には該当しません。しかし、表現の仕方や組み合わせによっては広告の性質も持ちうるという、広告との境界が極めてあいまいな位置に存在している」。つまり、疾患啓発コンテンツは「広告ではない」という前提のもとで作られるが、「自由に何でも書ける」わけでもない、独特の規制環境のもとにある。

本レポートでは、製薬協(日本製薬工業協会)の自主規範「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」、厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を中心に、疾患啓発コンテンツの適正な情報設計を、製薬企業の実務担当者・医療機器企業担当者・コンテンツ制作者が活用できる形で詳述する。


2. 「疾患啓発サイト」と「患者向けサイト」という2つの区分

2.1 製薬協指針における基本的な区分

製薬協は、会員会社がホームページにコンテンツを掲載する際の自主規範として「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」を作成している(平成28年7月15日付製薬協発第497号、令和4年8月24日改定)。Medinewの解説によれば、この指針では一般人向けの情報提供を以下の2つに区分している。

1)製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ=「疾患啓発サイト」に相当 2)製品を服用する患者とその家族を対象としたコンテンツ=「患者向けサイト」に相当

この2区分は、対象とする読者の状態(未診断か、すでに治療中か)によって、求められる情報提供のあり方が大きく異なることを示している。

2.2 疾患啓発サイトの位置づけ

Medinewの解説では、「疾患啓発サイト」の性格について重要な指摘がなされている。「『疾患啓発サイト』は医療用医薬品プロモーションの枠組みの中で制作されるという性格を持っています。自社医薬品を推奨するようなあからさまな表現は、広告となってしまうので禁止されていますが、しかし単なる疾患情報の提供のみにとどまらず、患者掘り起こしなどを介しての患者獲得も少なからず想定していると考えられます」。

メンバーズメディカルマーケティングカンパニーの「Webサイト戦略マップ」では、疾患啓発サイト(DAS)の目的を「一般向けに疾患の認知向上と適切な受診促進」、主な対象ユーザーを「未診断の一般人、その家族」と整理し、その戦略的役割を「治療の前段階にいる層と接点を持ち、正しい知識を提供することで早期受診や医療へのアクセス向上を促す」ことだとしている。同時に「製品訴求については『情報提供』と『プロモーション』の間の微妙な境界線上で薬機法や医療広告ガイドラインの解釈において常に注意が必要」と明記され、疾患領域への認知向上と自社ソリューションへの間接的誘導を担う「プレブランディング」の役割を果たすものとして位置づけられている。

2.3 患者向けサイトの位置づけ

一方、「患者向けサイト」は性格が異なる。Medinewの解説では「『患者向けサイト』はすでに自社医薬品を使用しているか、これから開始する患者を対象としています。適正使用や安全対策の情報に限定して提供するため、原則としてプロモーションは主目的ではありません」とされる。

メンバーズメディカルマーケティングカンパニーの整理では、患者向けサイトの目的は「医薬品の適正使用と継続治療支援」、主要コンテンツ例は「効能・用量・副作用、服用時の注意、相談窓口」とされ、戦略的役割は「正しい服薬をサポートし、アドヒアランス(服薬遵守)や治療成果の最大化をすること」とされている。これはレポート28で詳述した服薬アドヒアランスの考え方と直接接続する位置づけである。

2.4 2つのサイトに共通する点と異なる点

Medinewの解説は、両者の関係を的確にまとめている。「『疾患啓発サイト』と『患者向けサイト』は、どちらも何らかの疾患に関する情報を提供しており、医療関係者以外を対象としているという点は同じです。しかし、その目的は少し異なります……このように2つのサイトは目的が異なるので、医師や医療関係者が対象ではないという点では共通していますが、コンテンツの表現方法や留意事項は異なるのです」。

つまり、「未診断の一般人に早期受診を促す」ことを目的とする疾患啓発サイトと、「すでに治療中の患者の適正使用・継続治療を支える」ことを目的とする患者向けサイトでは、同じ「一般人向け」という大枠の中でも、扱う情報の専門性・具体性・プロモーション的要素の度合いが大きく異なる。


3. 厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」

3.1 ガイドラインの基本的な考え方

厚生労働省は2018年(平成30年9月25日付け薬生発0925第1号)に「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を発出している。このガイドラインは、医薬品製造販売業者等が行う販売情報提供活動全般を対象とし、注目すべきは「一般人を対象とするものを含む」と明記されている点である。すなわち、一般人向けの疾患啓発も、このガイドラインが定める販売情報提供活動に含まれる。

ガイドラインが適用される対象者の範囲も広い。厚生労働省の通知では「医薬情報担当者……、メディカル・サイエンス・リエゾンその他の名称やその所属部門にかかわらず、医薬品製造販売業者等が雇用する全ての者等に対して適用される」とされ、特定の職種・部門に限定されない、企業全体としての遵守が求められる。

3.2 販売情報提供活動が満たすべき要件

厚生労働省の通知(販売情報提供活動ガイドライン)では、販売情報提供活動が満たすべき要件として、「提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等の情報は、承認された範囲内のものであること」が明記されている。さらに「提供する情報は、虚偽・誇大な内容であってはならず、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないこと。また、情報提供にあたっては、要約、省略、強調等を行わないこと」という、極めて厳格な正確性の要求が示されている。

3.3 一般人向け疾患啓発における特有の禁止事項

ガイドラインには、一般人向けの疾患啓発に特化した重要な禁止事項が定められている。「不適正使用又は誤使用を誘発しないよう」にするための規定の一つとして、「一般人向けの疾患啓発において、医療用医薬品による治療(診断及び予防を含む。以下同じ。)のみを推奨するなど、医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること」が禁止されている。

メディウィルの解説では、この規定の実務的な意味を以下のように説明している。「疾患啓発の記事を読んだ患者さんが『医療用医薬品による治療だけが唯一の治療手段だ』と誤認しかねない内容にならないように、コンテンツづくりを進めていく必要があります」。

これは、疾患啓発コンテンツが本質的に「製品を売りたい」という企業の動機から生まれるものであっても、読者である一般人・患者には「治療には複数の選択肢があり、医薬品はその一つである」という、バランスの取れた情報を提供しなければならないことを意味する。例えば、レポート2で詳述した花粉症の治療について啓発する場合、薬物療法だけでなく、生活環境の改善・アレルゲン回避といった非薬物療法的なアプローチについても触れることが、このガイドラインの趣旨に適った設計となる。

3.4 その他の禁止事項

同ガイドラインでは、以下のような禁止事項も列挙されている。「承認された効能・効果、用法・用量等以外の使用方法を推奨すること(外国において承認等を得ている場合であっても同様)」「科学的又は客観的な根拠なく恣意的に、特定の医療用医薬品の処方、使用等に誘引すること」「他社製品を誹謗、中傷すること等により、自社製品を優れたものと訴えること」。

これらは、レポート35で詳述した適応外使用レポート23で詳述した比較優良広告の禁止と通じる考え方であり、疾患啓発という枠組みにおいても、承認範囲外の使用推奨・他社誹謗による自社優位性の主張が一貫して禁止されていることがわかる。


4. 社内審査体制という組織的な要請

4.1 営業部門から独立した審査の必要性

製薬協指針は、疾患啓発コンテンツの適正性を担保するための組織的な仕組みについても規定している。メディウィルの解説によれば、「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」の「3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ」では、「疾患啓発に関するコンテンツ掲載にあたっては……営業部門から独立した社内審査体制の主管部門による社内審査を経ること」が求められている。

この「営業部門からの独立性」という要件は重要である。疾患啓発コンテンツは本質的にプロモーション的な意図を含みうるため、その制作・公開の判断を営業部門に委ねると、商業的な動機が情報の正確性・バランスを損なうリスクが高まる。コンプライアンス部門等の独立した主管部門による審査を経ることが、こうしたリスクを抑制する組織的な仕組みとして位置づけられている。

4.2 コンプライアンス部門との早期連携

メディウィルの解説では、実務的な助言として「患者さん向けの疾患啓発を進めるにあたっては、発信したい情報の内容が社内のルールに則っているかコンプライアンス部門等に確認してもらうことが大切です。できれば疾患啓発のコンテンツ作成前に企業内の情報発信の方針について相談しておくと、プロジェクトがより円滑に進む」とされている。

コンテンツの完成後にコンプライアンスチェックを行うのではなく、企画段階から方針を確認しておくことが、後の修正コストを抑え、円滑なプロジェクト進行につながるという実務的な知見である。これはレポート25で詳述した医療機関の業務設計における「タスクシフト」や事前のプロセス設計とも通じる、効率的な体制構築の考え方である。


5. 医療機器領域における留意点

5.1 医療機器適正広告ガイドの規定

医薬品だけでなく、医療機器領域においても疾患啓発コンテンツに関する規定が存在する。一般社団法人日本医療機器産業連合会の「医療機器適正広告ガイド」(2024年2月改定)では、「プレスリリース、会社案内などの企業活動の紹介資材、一般消費者や患者向け疾患啓発活動、投資家への情報提供等の情報発信活動の場合であっても、医療機器の広告活動又は未承認医療機器(適応外使用を含む)を推奨する広告と疑われることがないよう、企画段階から内容の精査を行うなど、法的規制や自主規範を遵守しなければならない」と明記されている。

この規定は、医療機器企業が行う一般消費者・患者向けの疾患啓発活動が、企業活動の紹介・投資家向け情報提供といった、本来は広告とは異なる目的の情報発信であっても、結果的に医療機器の広告・未承認医療機器の推奨と疑われる内容にならないよう、企画段階からの精査を求めるものである。レポート29で詳述したレポート29で詳述した睡眠検査機器のような医療機器を扱う企業にとっても、この精査プロセスは重要である。


6. アレルギー疾患・睡眠医療領域における疾患啓発コンテンツの設計

6.1 未診断者への早期受診促進という役割

アレルギー疾患・睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、いずれも「症状があっても受診していない」未診断者が多いという特性を持つ疾患領域である。レポート1で詳述したSASの未診断率レポート16で詳述した花粉症の「我慢してから受診」傾向を踏まえると、疾患啓発サイトが担う「早期受診の促進」という役割は、これらの疾患領域において特に重要な意義を持つ。

6.2 「医薬品だけが治療手段ではない」という配慮

アレルギー疾患の疾患啓発コンテンツを設計する際には、前述の「医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること」の禁止に留意し、レポート2で詳述した非薬物療法的なアプローチ(アレルゲン回避・生活環境の改善等)・レポート5で詳述した舌下免疫療法という根治的アプローチについても、バランスよく情報提供することが、ガイドラインの趣旨に適った設計となる。

SAS領域では、レポート3で詳述した生活習慣の改善レポート31で詳述したCPAP治療等の複数の治療選択肢を、医薬品(該当する場合)と並列にバランスよく紹介することが、適正な疾患啓発コンテンツの設計につながる。

6.3 患者向けサイトとしての服薬継続支援

レポート28で詳述したLINEを活用した服薬継続支援レポート31で詳述したCPAPアドヒアランスの文脈では、患者向けサイトが提供すべき「適正使用や安全対策の情報」は、すでに治療を開始している患者の治療継続を支える重要な役割を果たす。疾患啓発サイトから患者向けサイトへの自然な遷移(未診断者が受診し、診断後に患者向けサイトで適正使用情報を得る)という設計は、患者ジャーニー全体を見据えたコンテンツ戦略として有効である。


7. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意

7.1 疾患啓発と患者向けサイトの目的を明確に区別する

コンテンツ制作にあたっては、まず「これは未診断者向けの疾患啓発なのか、それとも治療中の患者向けの適正使用支援なのか」という目的を明確に区別することが重要である。両者を混同したコンテンツ設計は、規制上のリスクだけでなく、読者にとっての情報の有用性も損なう。

7.2 早期の社内審査体制の活用

製薬協指針が求める「営業部門から独立した社内審査」を、コンテンツ企画の早期段階から活用する体制を構築することが、規制リスクを抑えながら効果的な疾患啓発を実現する実務的な鍵である。

7.3 治療選択肢のバランスある提示

レポート22で詳述した「効果を語るのではなく、情報を提供する」という設計思想と同様に、疾患啓発コンテンツにおいても、特定の医薬品による治療のみを推奨するのではなく、治療選択肢全体をバランスよく提示することが、規制遵守と読者の信頼獲得の両方に資する。


8. まとめ

疾患啓発コンテンツは、「広告ではない」という位置づけでありながら、製薬協の自主規範「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」、厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」という複数の規範のもとで、適正な情報設計が求められる独特の領域である。

「疾患啓発サイト」(未診断の一般人への早期受診促進)と「患者向けサイト」(治療中の患者への適正使用・継続治療支援)という2つの区分は、対象読者の状態に応じて求められる情報の専門性・プロモーション的要素の度合いが異なることを示している。

「医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること」の禁止という核心的な規定は、疾患啓発コンテンツが企業の商業的動機から生まれるものであっても、読者には治療選択肢全体をバランスよく伝えるべきという、情報提供者としての責任を示している。営業部門から独立した社内審査体制の構築、コンプライアンス部門との早期連携、医療機器領域における企画段階からの精査という組織的な仕組みが、これらの規定を実効性のあるものにする基盤となる。

アレルギー疾患・睡眠時無呼吸症候群のような、未診断者が多く存在する疾患領域においては、疾患啓発コンテンツが早期受診の促進という重要な社会的役割を担う。その役割を果たしながら規制を遵守するためには、医薬品だけでなく治療選択肢全体をバランスよく提示する設計思想が不可欠である。


参考情報・出典

  • 日本製薬工業協会「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」平成28年7月15日付製薬協発第497号、令和4年8月24日改定

  • 日本製薬工業協会「製薬協コード・オブ・プラクティス」2019年

  • 厚生労働省「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」平成30年9月25日付け薬生発0925第1号

  • Medinew(メディニュー)「【2025年最新】疾患啓発サイト、患者向けサイトをつくるときに守るべきルールとは?」

  • 株式会社メディウィル「製薬会社・医療機器メーカーの患者さん向け疾患啓発において守るべきガイドラインとは?」

  • メンバーズメディカルマーケティングカンパニー「【Webサイト戦略マップ】製薬・医療・ヘルスケア系サイトを徹底解説!」2025年8月27日

  • 一般社団法人日本医療機器産業連合会「医療機器適正広告ガイド」2024年2月改定

  • 日本製薬団体連合会安全性委員会「令和5年度 販売情報提供活動監視事業報告書について」2024年7月4日


本レポートは公開情報・行政情報に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断や法的助言を目的とするものではありません。また、医療用医薬品の販売情報提供活動・疾患啓発コンテンツの制作に関する記述は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律専門家による個別具体的な助言に代わるものではありません。実際のコンテンツ制作にあたっては、最新のガイドライン・自主規範を確認の上、必要に応じて社内コンプライアンス部門・弁護士等の専門家にご相談ください。

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