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海外医薬品情報の調べ方と注意点 一般名・添付文書・公的データベースを活用した正確な医薬品情報の確認手順

2026/7/1 08:38

海外医薬品情報の調べ方と注意点 一般名・添付文書・公的データベースを活用した正確な医薬品情報の確認手順

海外医薬品情報の調べ方と注意点

一般名・添付文書・公的データベースを活用した正確な医薬品情報の確認手順

日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:医薬品輸入サポートプロジェクト


1. はじめに――「同じ薬」が国によって違う名前で呼ばれる世界

レポート33で詳述した医薬品個人輸入の制度とリスクでは、海外医薬品を安易に入手することの危険性を論じた。しかし、海外在留邦人・訪日外国人の医療対応・国内未承認薬を医師の管理下で適正に取り扱う場面など、海外医薬品の情報を正確に調べる必要が生じる状況は確実に存在する。

海外医薬品の情報を調べる際に最初に直面する困難が、「同じ有効成分の薬が、国によって全く異なる商品名(販売名)で流通している」という事実である。例えば、ある成分の薬が日本では商品名A、アメリカでは商品名B、ヨーロッパでは商品名Cという形で販売されていることは珍しくない。商品名だけを頼りに情報を調べようとすると、同一の薬を別物と誤認したり、逆に異なる薬を混同したりするリスクがある。

この問題を解決する鍵が、「一般名(generic name)」あるいは「国際一般名(INN:International Nonproprietary Name)」という、世界共通で用いられる成分名である。本レポートでは、海外医薬品情報を正確に調べるための公的データベースの活用方法、一般名による名寄せの手法、信頼できる情報源の見極め方を、医師・薬剤師・医療従事者・レポート17で詳述した海外在留邦人の医療を支援する関係者・製薬企業担当者が活用できる形で詳述する。


2. 一般名(INN)という世界共通言語

2.1 商品名と一般名の違い

医薬品には、大きく分けて「商品名(販売名・ブランド名)」と「一般名(成分名)」という2種類の名称がある。商品名は製薬企業が製品ごとに付ける名称であり、同じ有効成分でもメーカー・国によって異なる。一方、一般名は有効成分そのものを指す名称であり、原則として世界共通である。

海外医薬品の情報を調べる際の鉄則は、「まず一般名を特定する」ことである。商品名から一般名を特定できれば、その一般名をキーに、世界中の医薬品情報データベースを横断的に検索することが可能になる。

2.2 国際一般名(INN)の役割

国際一般名(INN)は、世界保健機関(WHO)が管理する、医薬品の有効成分に対する世界共通の名称である。INNは各国の規制当局・医療従事者・研究者の間で共通言語として機能し、医薬品の国際的な情報流通を支える基盤となっている。

ただし、注意すべき点として、一般名には地域による表記の揺れが存在する場合がある。例えば、米国で用いられる一般名(USAN:United States Adopted Name)と、英国で用いられる一般名(BAN:British Approved Name)、そしてINNが微妙に異なるケースがある。海外医薬品情報を調べる際には、こうした表記の差異も念頭に置く必要がある。


3. 公的データベースの活用

3.1 PMDA(医薬品医療機器総合機構)の添付文書検索

国内で承認されている医薬品については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「医療用医薬品 添付文書等情報検索」を提供しており、添付文書・患者向医薬品ガイド・承認情報等を検索できる。PMDAの検索システムでは、「一般名・販売名」「一般名のみ」「販売名のみ」といった検索条件を選択でき、「部分一致」「前方一致」での検索も可能である(PMDA添付文書情報検索)。

海外医薬品が国内で承認されている同一成分の薬を持つ場合、一般名でPMDAを検索することで、その成分の国内での承認状況・添付文書情報(効能効果・用法用量・副作用・禁忌等)を確認できる。これは、海外医薬品の安全性情報を日本語で確認するための重要な第一歩である。

3.2 PMDAの海外規制情報

PMDAは「海外規制情報」として、各国・地域の医薬品規制に関する情報も提供している。PMDAのアジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA-ATC)では、インド・インドネシア・タイ・台湾・フィリピン・ベトナム・マレーシア等のアジア諸国・地域における医薬品規制情報の調査報告書が公開されている(PMDA海外規制情報)。レポート19で詳述した在留外国人の出身国(東南アジア・南アジアが増加)の医薬品事情を理解する上で、こうした地域別の規制情報は有用な参考資料となる。

3.3 KEGG DRUG Databaseによる国際的な名寄せ

国立国会図書館のリサーチ・ナビ「海外の医薬品について調べる」では、医薬品情報の国際的な名寄せに有用なデータベースとして「KEGG DRUG Database」が紹介されている。この解説によれば、「日本、アメリカ、ヨーロッパの医薬品情報を一元的に集約したデータベースで、化学構造と成分の様々な観点から医薬品が体系化されています」とされる。

KEGG DRUG Databaseの実用的な活用方法として、「ツリーを展開して一般名を表示させ、併記されたDから始まるコード(D番号)をクリックすると、日本・アメリカでの商品名を確認できます。また、『日本・米国・欧州の新薬』では、有効成分ごとに日本・アメリカ・ヨーロッパでの新薬の承認情報を一覧で確認できます」(国立国会図書館リサーチ・ナビ)とされる。このデータベースは、「WHOのATC分類」や「米国USPの分類」といった薬効分類からの検索にも対応しており、ある成分が日本・アメリカ・ヨーロッパでそれぞれどのような商品名で販売されているかを横断的に確認できる、海外医薬品の名寄せにおいて極めて有用なツールである。

3.4 各国規制当局の公式情報

より詳細な情報が必要な場合は、各国の規制当局の公式データベースが信頼できる一次情報源となる。

米国FDA(食品医薬品局):FDAが承認した医薬品の情報を確認できる。国立国会図書館の解説では、『AHFS Drug Information』が「アメリカの食品医薬品局(FDA)が承認した医薬品の用法・用量や相互作用、薬物動態といった情報を、包括的に確認できる」資料として紹介されている。

欧州EMA(欧州医薬品庁):国立国会図書館の解説によれば、「欧州経済領域(EEA)内で販売される新薬は、欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)による中央審査方式と呼ばれる審査を経る場合がほとんど」であり、EMAの公式情報がヨーロッパで承認された医薬品の信頼できる情報源となる。

3.5 国立医薬品食品衛生研究所の医薬品情報ガイド

国立医薬品食品衛生研究所は「医薬品情報全般」として、安全性(副作用)・緊急情報・承認薬情報・臨床試験情報・医薬品データベース・一般向け情報・診療ガイドライン・中毒/毒性情報等を体系的に整理した医薬品情報ガイドを提供している(国立医薬品食品衛生研究所、2024年4月更新)。各国機関からの安全性情報・国内外の承認薬情報への入り口として有用である。


4. 海外医薬品情報を調べる実践的な手順

4.1 ステップ1:商品名から一般名を特定する

海外医薬品の情報を調べる出発点は、手元にある商品名から一般名を特定することである。KEGG DRUG Database等を用いて、商品名に対応する有効成分(一般名)を確認する。パッケージや添付文書に「一般名」「active ingredient」「INN」等の表記があれば、それを手がかりとする。

4.2 ステップ2:一般名で国内承認状況を確認する

特定した一般名で、PMDAの添付文書検索を行い、その成分が日本国内で承認されているかを確認する。承認されている場合、国内の添付文書(日本語)で効能効果・用法用量・副作用・禁忌・相互作用等を詳細に確認できる。これにより、海外医薬品の成分について日本語で正確な医学的情報を得られる。

4.3 ステップ3:国内未承認の場合は各国規制当局情報を確認する

国内で承認されていない成分の場合は、その成分が承認・使用されている国の規制当局(FDA・EMA等)の公式情報を確認する。各国の添付文書(米国ではprescribing information、欧州ではSmPC:Summary of Product Characteristics)が、その医薬品の公式な情報源となる。

4.4 ステップ4:安全性情報・健康被害情報を確認する

レポート33で詳述した個人輸入のリスクを踏まえ、調べている医薬品について、厚生労働省の「健康被害情報」「あやしいヤクブツ連絡ネット」、各国規制当局の安全性警告(safety alert)等を確認する。偽造医薬品の報告がある医薬品・重大な副作用が報告されている医薬品については、特に慎重な対応が必要である。


5. 信頼できる情報源の見極め

5.1 一次情報を優先する

海外医薬品情報を調べる際の大原則は、規制当局・公的機関・製薬企業の公式情報という「一次情報」を優先することである。個人輸入代行業者のウェブサイト・個人ブログ・口コミサイト等の二次的・三次的な情報源は、正確性が担保されておらず、レポート33で詳述した個人輸入代行業者の違法性の問題も踏まえると、医学的判断の根拠とすべきではない。

5.2 情報源の階層

海外医薬品情報の信頼性の階層を整理すると、以下のようになる。

最も信頼できる情報源は、各国規制当局(PMDA・FDA・EMA等)の公式データベース・添付文書である。次いで、WHO・KEGG等の国際的・公的なデータベース、製薬企業の公式情報、査読を経た学術論文・診療ガイドラインが信頼できる。一方、個人輸入代行業者の広告・個人のSNS投稿・出所不明のウェブサイトは、情報源として依拠すべきではない。

5.3 医薬品情報専門家(薬剤師・DI担当者)の活用

医療機関においては、医薬品情報(DI:Drug Information)を専門に扱う薬剤師が、海外医薬品情報の調査において重要な役割を果たす。複雑な海外医薬品情報の調査・評価には専門的な知識が必要であり、レポート25で詳述した医療機関の業務設計におけるタスクシフトの観点からも、医師が単独で調べるのではなく、薬剤師の専門性を活用することが効率的かつ正確である。


6. アレルギー疾患・睡眠医療領域における具体例

6.1 アレルギー治療薬の国際的な名称の違い

レポート5で詳述したアレルギー治療薬(抗ヒスタミン薬・鼻噴霧用ステロイド・舌下免疫療法製剤等)は、国によって商品名が大きく異なる。海外在留邦人が現地で同等の薬を入手したい場合、日本での商品名ではなく一般名を確認し、現地で対応する商品名を調べる必要がある。例えば、ある第2世代抗ヒスタミン薬の一般名を特定し、KEGG DRUG Database等で現地(滞在国)での商品名を確認するという手順が有用である。

6.2 喘息吸入薬の配合・デバイスの違い

レポート8で詳述した喘息治療で用いられる吸入ステロイド薬・ICS/LABA配合剤は、国によって配合される成分の組み合わせ・用量・吸入デバイスが異なる場合がある。海外で同等の吸入薬を入手・使用する際には、一般名(含まれる有効成分)と用量を正確に確認し、デバイスの操作方法の違いにも注意する必要がある。

6.3 帯状疱疹ワクチン等の国際的な確認

レポート11で詳述した帯状疱疹ワクチンのように、国際的に流通する製剤については、各国での承認状況・接種スケジュールの違いを公的情報源で確認することが重要である。海外で接種を受けた患者が帰国後に日本で追加接種を検討する場合など、国際的な製剤情報の正確な把握が求められる。


7. 製薬企業・医療機関・適正輸入事業者への含意

7.1 医療従事者向けの海外医薬品情報提供

製薬企業が、自社製品の海外での承認状況・各国での販売名・成分情報を整理して医療従事者に提供することは、海外在留邦人の医療対応・訪日外国人の診療において有用な支援となる。特に、グローバルに展開する製品については、各国での名称・規格の対応表が、医療現場での混乱を防ぐ実用的な情報資源となる。

7.2 適正な輸入支援における情報確認

レポート33で詳述した適正な医薬品輸入を支援する事業においては、輸入しようとする医薬品の正確な情報(一般名・成分・各国での承認状況・安全性情報)を公的データベースで確認するプロセスが不可欠である。商品名だけに依拠せず、一般名による正確な名寄せと公的情報源での確認を徹底することが、適正な輸入支援の基盤となる。

7.3 患者・在留邦人向けの情報リテラシー支援

海外在留邦人・患者が、自身が使用している医薬品の情報を正しく調べられるよう、「商品名ではなく一般名を確認する」「公的データベースを参照する」「個人輸入代行業者の広告を情報源にしない」という基本的な情報リテラシーを伝えることは、患者の安全を守る重要な教育的取り組みである。


8. まとめ

海外医薬品の情報を正確に調べるためには、「商品名は国によって異なるが、一般名(INN)は世界共通である」という原則を理解し、一般名を起点とした調査を行うことが鍵となる。

PMDAの添付文書検索(国内承認薬の日本語情報)、KEGG DRUG Database(日米欧の医薬品情報の一元的な名寄せ)、各国規制当局(FDA・EMA等)の公式情報という、信頼できる公的データベースを階層的に活用することで、海外医薬品の成分・効能・副作用・安全性情報を正確に確認できる。

「商品名から一般名を特定する→一般名で国内承認状況を確認する→未承認の場合は各国規制当局情報を確認する→安全性情報を確認する」という体系的な手順を踏むことで、出所不明の二次情報に惑わされることなく、信頼できる医薬品情報にたどり着くことができる。

個人輸入代行業者の広告・個人のSNS投稿といった信頼性の低い情報源に依拠するのではなく、規制当局・公的機関・製薬企業の公式情報という一次情報を優先し、必要に応じて医薬品情報を専門とする薬剤師の知識を活用することが、海外医薬品情報の調査における正確性と患者安全を確保する道筋である。レポート33で詳述した個人輸入のリスクと本レポートの情報調査手法を併せて理解することで、海外医薬品に関わる場面での適切な判断が可能になる。


参考情報・出典

  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用医薬品 添付文書等情報検索」

  • PMDA「海外規制情報」「アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA-ATC)」調査報告書

  • PMDA「添付文書情報検索(一般名・販売名検索)」

  • 国立国会図書館 リサーチ・ナビ「海外の医薬品について調べる」(KEGG DRUG Database・AHFS Drug Information・EMA中央審査方式の解説)

  • KEGG DRUG Database(日本・アメリカ・ヨーロッパの医薬品情報統合データベース)

  • 国立医薬品食品衛生研究所「医薬品情報全般」(2024年4月更新)

  • 米国食品医薬品局(FDA)公式医薬品情報

  • 欧州医薬品庁(EMA)公式医薬品情報

  • 世界保健機関(WHO)国際一般名(INN)


本レポートは公開情報・行政情報に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断や法的助言を目的とするものではありません。本レポートは医薬品の不適切な個人輸入を推奨するものではなく、正確な医薬品情報の調査手法の理解を通じて患者の安全と適正な医療アクセスを支援することを目的としています。医薬品の使用にあたっては、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

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