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活動報告
地域社会と医療機関の協働モデル かかりつけ医機能報告制度と地域医療連携推進法人が描く2026年からの地域医療
JMWO-RR-0060
最終更新日 2026/7/1
地域社会と医療機関の協働モデル かかりつけ医機能報告制度と地域医療連携推進法人が描く2026年からの地域医療
地域社会と医療機関の協働モデル
かかりつけ医機能報告制度と地域医療連携推進法人が描く2026年からの地域医療
日本医療福祉機構 調査レポート|関連プロジェクト:地域健康リテラシープロジェクト
- 地域社会と医療機関の協働モデル
- かかりつけ医機能報告制度と地域医療連携推進法人が描く2026年からの地域医療
- 1. はじめに――本シリーズ60本を締めくくる「協働」というテーマ
- 2. かかりつけ医機能報告制度という新たな枠組み
- 2.1 制度創設の背景
- 2.2 「紹介と逆紹介」という機能分化の推進
- 2.3 「協議の場」という新たな会議体
- 2.4 患者にとっての可視化という価値
- 2.5 実務上のスケジュールと院内対応
- 3. 地域医療連携推進法人という先行する協働モデル
- 3.1 制度の基本構造
- 3.2 具体的な連携事業の広がり
- 3.3 58法人という着実な広がり
- 3.4 個人立医療機関の参画拡大という制度改善
- 4. アレルギー疾患・睡眠医療領域における協働の実践
- 4.1 かかりつけ医機能報告制度とアレルギー専門診療の連携
- 4.2 地域医療連携推進法人による検査機器の共同利用
- 5. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意
- 5.1 「協議の場」への専門的知見の提供
- 5.2 地域医療連携推進法人との連携機会
- 6. まとめ――全60本シリーズの結びとして
- 参考情報・出典
1. はじめに――本シリーズ60本を締めくくる「協働」というテーマ
本レポートは、日本医療福祉機構が2026年にわたり展開してきたB2B医療レポートシリーズ、全60本の最終回である。レポート57で詳述した地域社会レベルのヘルスリテラシー投資、レポート58で詳述した高齢者向けコンテンツのデザイン原則、レポート59で詳述したアクセシビリティという法的枠組み——プロジェクト15「地域健康リテラシー」を締めくくる本レポートは、これらの個別の取り組みを束ねる、より大きな制度的枠組みとしての「地域社会と医療機関の協働モデル」を論じる。
2025年4月、日本の地域医療体制に大きな制度変更が施行された。「かかりつけ医機能報告制度」である。ユヤマ公式コラムの解説によれば、この制度は「令和7年4月1日に施行された医療法第30条18の4に規定されており」、「医療機関が自院の有する『かかりつけ医機能』を都道府県知事に報告し,その情報が地域住民に公表されるとともに,地域の協議の場で医療体制の構築に活用される制度」である。本レポートでは、この新制度、そして先行して普及してきた「地域医療連携推進法人」という枠組みを通じて、医療機関・自治体・住民が協働して地域医療を支える仕組みを、医療機関経営者・自治体関係者・製薬企業/医療機器企業担当者が活用できる形で詳述し、全60本にわたる本シリーズを締めくくる。
2. かかりつけ医機能報告制度という新たな枠組み
2.1 制度創設の背景
ユヤマ公式コラムの解説では、この制度創設の背景となった、日本社会の構造的な変化が示されている。「本制度が創設された背景には,日本の人口構造の急激な変化と,それに伴う医療ニーズの変容があります。内閣府が公表した『令和7年版高齢社会白書』によると,日本の総人口における高齢化率(65歳以上人口の割合)は2024年(令和6年)の時点で29.3%に達しました」。
DoctorVision(医師向けメディア)の解説では、国際比較においてもこの数値の突出ぶりが示されている。「高齢化率で日本に続くのはマルティニークの25.3%……プエルトリコ24.7%……イタリア24.6%……であり,日本が断然高いことがわかります」とされ、「第2次ベビーブーム期に生まれた世代が65歳以上となる2040年には高齢化率は34.8%,2045年には36.3%と推定されています」という将来推計も示されている。
2.2 「紹介と逆紹介」という機能分化の推進
GemMed(医療専門メディア)の解説では、この制度が目指す機能分化の具体的な内容が示されている。「『まず,かかりつけ医を受診し,そこから基幹病院の専門外来を紹介してもらう。専門外来での治療が一定程度終了した後には,かかりつけ医に逆紹介を行う』という外来医療の流れ・機能分化を推し進めると同時に,地域包括ケアシステムの中で極めて重要な役割を果たす『かかりつけ医機能を持つ医療機関』の明確化を図る狙いがあります」。
株式会社ソラストの解説でも、この仕組みが具体的に説明されている。「紹介と逆紹介の仕組みを整えることで,患者さんは必要な専門的治療を受けつつ,回復後はかかりつけ医のもとで継続的な健康管理が行えるようになります」とされ、レポート21で詳述した医療機関のコミュニケーションという、患者一人ひとりへの丁寧な対応が、こうした地域全体の医療体制設計とも密接に結びついていることが示されている。
2.3 「協議の場」という新たな会議体
ユヤマ公式コラムの解説では、この制度の運用の中心となる仕組みが説明されている。「医療機関からの報告をもとに,各地域で『どの機能が不足しているか』『どの医療機関がどの役割を担っているか』を明確にし,自治体や医療関係者が協議の場で対策を検討します」。
GemMedの解説では、この「協議の場」の運用上の重要な留意点も示されている。「既存の場(例えば地域医療構想調整会議,地域ケア会議,在宅医療・介護連携会議など,都道府県,市町村,医師会等主体は問わず)で同様の趣旨・内容を協議している,または協議可能な会議体がないか確認する(会議体が乱立すれば協議が非効率となってしまうため)」とされ、新たな会議体を安易に増やすのではなく、既存の枠組みとの整合性を確認することの重要性が強調されている。
さらに、「参加者については,『地域のキーパーソン』の参加が重要である」とされ、「【24時間往診体制を検討する場合】→地域医師会の在宅担当理事,在宅医療を行う診療所,訪問看護ステーションなど」「【入退院支援ルールを検討する場合】→後方支援病院の病院長・地域連携室長,在宅医療を提供する医師など」という、テーマに応じた具体的な参加者像も例示されている。
2.4 患者にとっての可視化という価値
ユヤマ公式コラムの解説では、この制度が患者側にもたらす具体的な利益が説明されている。「各医療機関が報告したかかりつけ医機能の情報は,『医療情報ネット(ナビイ)』などを通じて公表され,患者が必要な医療を提供できる身近なクリニックを見つけやすくなります。日常的な診療や在宅医療に対応できるクリニックの情報が可視化されることで,患者は安心して受診先を選べるようになります」。
これはレポート41で詳述した患者のクリニック選定行動における、より公的で信頼性の高い情報源が新たに整備されることを意味する。「Google検索」「口コミ」といった従来の情報源に加え、行政が公式に整備する「医療情報ネット」という選択肢が、患者の情報探索の基盤として機能することになる。
2.5 実務上のスケジュールと院内対応
ユヤマ公式コラムの解説では、制度施行の具体的なスケジュールと、医療機関側に求められる実務対応が示されている。「制度施行後の初回報告は2026年(令和8年)1月から3月に行われます。期間内の報告はもちろん,報告した自院の機能についての院内掲示や,4か月以上継続して医療を提供する場合の患者説明など,クリニック内でも十分な準備と対応が求められます」。
これは、本レポートが執筆されている2026年という時点において、まさに全国の医療機関が対応を進めている、極めて現在進行形の制度変更である。
3. 地域医療連携推進法人という先行する協働モデル
3.1 制度の基本構造
厚生労働省の解説によれば、地域医療連携推進法人とは「地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するため,病院等に係る業務の連携を推進するための方針(医療連携推進方針)を定め,医療連携推進業務を行う一般社団法人を都道府県知事が認定(医療連携推進認定)する制度」である。日経メディカルの解説では、この制度の理念が端的に示されている。「『競争よりも協調』を重視し,地域医療構想を達成する選択肢の1つとして2017年度に創設されました」。
ニッセイ基礎研究所の解説では、この協力形態の性格がより具体的に表現されている。「ホールディングカンパニー(持株会社)のような組織形態の下,複数の医療法人が『連携以上,統合未満』で協力し合うことが重視されている」とされ、「一般に設立母体の異なる法人間で,経営面まで踏み込んだ連携をするには障壁がありますが,連携推進法人を活用することで,合併とは異なり,各法人の独立性を維持しながら参加法人との連携を強化できます」(日経メディカル解説)という、独立性を保ったまま連携を深めるという、絶妙な制度設計が示されている。
3.2 具体的な連携事業の広がり
日経メディカルの解説では、この制度のもとで実施可能な具体的な事業内容が列挙されている。「医師・看護師などの共同研修や参加法人間での職員派遣,医薬品などの共同購入,病床過剰地域における病床融通,参加法人への資金貸し付け,連携推進法人による持ち株会社の設立(100%出資)」といった、多岐にわたる連携が可能とされている。
福井県の資料では、より実務的な効果も示されている。「患者紹介・逆紹介の円滑化・・・カルテの統一化,重複検査の防止,スムーズな転院」「医薬品・医療機器等の共同購入・・・経営効率の向上」「医師等医療従事者の再配置・・・法人内の病院間での適正配置」といった、複数の医療機関にまたがる効率化が実現されている。
3.3 58法人という着実な広がり
厚生労働省の解説(令和8年1月時点)では、「令和8年1月1日現在,以下の58法人が地域医療連携推進法人として認定されています」とされ、日経メディカルの解説(2023年4月時点データ)と比較すると、「2023年4月1日時点で21道府県34法人まで増えました」という数値から、着実な拡大が続いていることがわかる。
ニッセイ基礎研究所の解説では、この普及の実態について、興味深い分析も示されている。「病床融通や共同での物品購入,人材確保・研修,人材派遣などについて,複数の医療法人が協力する『地域医療連携推進法人』の数が累計で50を超え,ジワジワと広がっている……主な目的は病床再編などを目指す『地域医療構想』の推進とされているものの,制度創設から10年が過ぎる中,医師不足の解消など幅広い目的で活用されている形だ」。
福井県の資料でも、実際の活用傾向が示されている。「地域医療連携推進法人の過半数以上は,共同研修,共同購買,機器の共同利用等に取り組んでおり,再編や提供医療に係る項目に取り組む法人は少ない傾向にあります」とされ、より実施しやすい分野から着実に活用が進んでいる実態が読み取れる。
3.4 個人立医療機関の参画拡大という制度改善
日経メディカルの解説では、近年の重要な制度改善も紹介されている。「これまでは,法人格を持たない個人立医療機関は連携推進法人に参画できませんでしたが,2024年度から個人立の医療機関や介護事業所が参画できる新類型が創設されることになりました」。この改善は、レポート25で詳述した医療機関の業務設計における人材不足という課題を抱える、個人経営の診療所にとっても、地域連携の恩恵を受けられる道が開かれたことを意味する。
4. アレルギー疾患・睡眠医療領域における協働の実践
4.1 かかりつけ医機能報告制度とアレルギー専門診療の連携
レポート14で詳述した対面受診の判断において、かかりつけ医が初期対応を行い、重症・専門的な治療が必要な場合にアレルギー専門医療機関へ紹介するという流れは、まさにかかりつけ医機能報告制度が目指す「紹介と逆紹介」の実践例である。レポート30で詳述した生活習慣病外来からのSAS拾い上げも、この機能分化の枠組みの中で、より体系的に運用されうる。
4.2 地域医療連携推進法人による検査機器の共同利用
レポート29で詳述したPSG検査のような高額な専門機器を要する検査体制について、地域医療連携推進法人の枠組みを通じた「医療機器の共同利用」(前述の日経メディカル解説)は、単独の医療機関では投資が難しい専門検査体制を、地域全体で維持可能にする実践的な選択肢となる。
5. 製薬企業・医療機器企業担当者への含意
5.1 「協議の場」への専門的知見の提供
かかりつけ医機能報告制度における「協議の場」では、地域の医療課題(在宅医療の担い手不足等)が議論される。製薬企業・医療機器企業が、こうした地域の協議の場に対し、疾患領域の専門的知見(アレルギー疾患・睡眠医療の地域における課題等)を提供することは、レポート37で詳述したメディカルアフェアーズの役割の、地域レベルでの発展的な実践となりうる。
5.2 地域医療連携推進法人との連携機会
地域医療連携推進法人による医薬品・医療機器の共同購入という仕組みは、製薬企業・医療機器企業にとって、個々の医療機関との個別交渉とは異なる、地域単位での取引・情報提供の機会を意味する。こうした法人単位での関係構築は、地域全体の医療の質向上に資する、より効率的な連携モデルとなりうる。
6. まとめ――全60本シリーズの結びとして
本レポートで論じたかかりつけ医機能報告制度・地域医療連携推進法人という2つの枠組みは、いずれも「競争よりも協調」「連携以上、統合未満」という理念のもとで、医療機関同士が独立性を保ちながら協働する、日本の地域医療の新しい形を示している。
2025年4月に施行され、2026年1月から初回報告が始まるかかりつけ医機能報告制度は、レポート49で詳述した予防接種制度のような複雑な制度と同様、患者・住民にとって決して分かりやすいとは言えない仕組みかもしれない。しかし、その根底にある目的——「地域で必要な医療機能を可視化し、不足を補い、患者が安心して受診先を選べるようにする」という理念——は、本シリーズが一貫して論じてきた、患者中心の情報設計・アクセス改善という思想と、深く共鳴するものである。
58法人にまで広がった地域医療連携推進法人は、10年という歳月をかけて、着実にその存在感を高めてきた。この歩みは、地域医療の協働モデルが、一朝一夕に実現するものではなく、レポート57で詳述した地域社会全体のヘルスリテラシー投資と同様、長期的な視座と、関係者間の粘り強い協働によって、徐々に築かれていくものであることを示している。
本シリーズは、睡眠時無呼吸症候群・アレルギー疾患という具体的な疾患領域から出発し、オンライン診療・多言語対応・医療広告規制・予防接種啓発・そして地域社会全体のヘルスリテラシーという、医療情報を取り巻く多岐にわたるテーマを、60本のレポートを通じて論じてきた。個々の患者・医療従事者・製薬企業・自治体が、それぞれの立場から、正確で、わかりやすく、誰もがアクセスできる医療情報の実現に向けて協働していくこと——それこそが、本シリーズ全体を貫く、最も重要な結論である。
参考情報・出典
ユヤマ公式コラム「2025年4月施行!『かかりつけ医機能報告制度』完全解説|クリニックに求められる役割と対応」
GemMed「『かかりつけ医機能報告』制度が2025年4月からスタート、都道府県は市町村との連携・協議の場設置、報告受療準備など進めよ―厚労省」2024年10月21日
DoctorVision「『かかりつけ医機能報告制度』とは?2025年度から必要な対応を一般医師向けに解説」
株式会社ソラスト「地域医療連携とは?メリットや新たな地域医療構想を経営者向けに解説【監修つき】」
厚生労働省「地域医療連携推進法人制度について」(令和8年1月1日現在58法人)
日経メディカル「地域医療連携推進法人ってどういうもの?」2024年4月30日
ニッセイ基礎研究所「地域医療連携推進法人の現状と今後を考える-『連携以上、統合未満』で協力する形態、その将来像は?」
福井県「2024年診療報酬改定からポスト2025へ どうする医療機関経営」
本レポートは公開情報・行政情報に基づき作成した調査レポートであり、個別の診断・治療判断や経営判断を目的とするものではありません。制度の詳細・最新の運用状況については、厚生労働省・お住まいの都道府県・かかりつけ医にご確認ください。
本レポートをもちまして、日本医療福祉機構による全60本のB2B医療レポートシリーズは完結いたします。これまでご愛読いただき、誠にありがとうございました。
関連プロジェクト:地域健康リテラシープロジェクト
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